サンパウロで20日から、日本が生んだ映画界の巨匠、溝口健二の特集が上映されている。
溝口健二は、第2次世界大戦後、黒澤明、小津安二郎と並んで、世界に日本映画を知らしめた三大巨匠のひとりとして知られる監督だ。
古くは平安時代から(公開当時の)現在に至るまで、日本の女性の生き様を、時に文学とも比較されるストーリーラインと、東洋的な美術センスで力強く描いた作風は、フランスのヌーヴェルヴァーグの鬼才、ジャン・リュック・ゴダールをはじめ、世界の名だたる映画人にも強い影響を与えている。かの「スター・ウォーズ」の人気キャラクター、「ヨーダ」は、溝口作品の脚本家として知られた依田義賢がモデルになっているのも有名な話だ。
また、ブラジルは日系人が多いこともあり、ブラジルの映画通の間では古くから、こうした戦後の日本映画の人気が高い。そんな溝口の特集上映が、サンパウロのパウリスタ大通りにあるモレイラ・サレス研究所(IMS)で行われている。
今回の溝口特集は、溝口研究家として知られる日本人の木下千花さんの監修で行われている。彼女自身も3月6日にサンパウロを訪れ、講演会を行う予定だ。
今回の特集上映で公開されるのは、「歌麿をめぐる5人の女」「夜の女たち」「祇園の姉妹」「浪華悲歌」「マリアのお雪」「元禄忠臣蔵(前編・後編)」「残菊物語」「ふるさとの歌」「お遊さま」「祇園囃子」「西鶴一大女」「雨月物語」「山椒大夫」「新・平家物語」「近松物語」「楊貴妃」「赤線地帯」。これらが2回ずつ上映される。
溝口作品として一般人気の高い「残菊物語」「西鶴一大女」「雨月物語」「山椒大夫」のほかに、ブラジルでは初公開で、日本でもきわめて珍しい1925年公開の無声映画「ふるさとの歌」や、異色作として知られる「楊貴妃」、そして遺作となった1956年の「赤線地帯」まで。溝口の世界を知るには十分な作品群だ。
お問い合わせはIMSの公式サイトhttps://ims.com.br/まで。(20日付エスタード紙サイトなどより)
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