記念誌『山本喜誉司賞の歩み』(同賞記念誌編纂委員会編、2009年)の記載内容に異議申し立てをしていた西尾之(故)・章子さん(ピエダーデ在住)夫妻が、同編纂委員会に7年の間に送った抗議文、委員とのやり取り文書、邦字紙に掲載された関連記事やコラム、同記念誌の誤認事項やそれを証明する資料などを一冊にまとめた本を2月20日に刊行した。タイトルは『「柿献上」と日本ブラジル移民100周年記念誌「山本喜誉司賞の歩み」誕生の軌跡』。発行部数は200冊。
主に俎上に上げられているのは第38回同賞受賞者・益田照夫さんの経歴。なかでも「天皇皇后両陛下に柿を献上した」との点や「柿の品種改良」などの記載を強く否定する。「柿の献上は益田さんと西尾さんがそれぞれ別に行なっており、品種改良については益田さん本人が否定している」と指摘する。
西尾さんはそのほか同記念誌の「早稲種甘柿『東京御所』の導入と市場拡大に貢献」という一文に、「穂木の提供者は元東京都立農事試験場の土方智先生である」と反論。一方、益田さんは「『導入』は市場に定着させたという意味」と説明する。
同記念誌の正誤表が同編纂委員会から配布されたが、ポ語の誤訳はそのままだという。章子さんがまとめた本にはルビ付きの日語で記念誌の正誤、章子さんが辞書片手に訳し要約したポ語資料も掲載した。
来社した西尾さんは、「歴史に誤りを残してはいけないと夫と共に重い腰を上げ、10年かけて完成させた」と紹介した。希望者には無料配布中。問合せは西尾さん(電話15・99700・8606)まで。
□関連コラム□大耳小耳
西尾さん夫・之さんが11年に亡くなった後も、1人で柿栽培を続け、寝る時間を削って同冊子を作り上げた。冊子の表紙には、之さんの「雪が降るところに」という遺言に従い、遺灰を撒いたチリのパイネ国立公園内にあるパイネの塔の写真を載せた。2015年に再訪した際、それまで塔を覆っていた雲が晴れたそうだ。また、付近に置いた供物もそのまま残っているのを見て、「これは夫からのメッセージ」と諦めかけていた冊子作りをなんとか終えたそうだ。文協、同賞関係者は一度読んで確認してみると良いのでは。