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キノコ雑考=ブラジルに於けるキノコ栽培の史実とその背景=元JAIDO及びJICA 農水産専門家 野澤 弘司 (15)

邦字紙に掲載された橋本先生より古本へのメッセージ

邦字紙に掲載された橋本先生より古本へのメッセージ

 この為藁の価格は逆に高騰を招き藁の代替原料を如何にするかは栽培者の最大の課題になった。当初は近隣の休閑地や山里に自生する雑草の性状や有効成分も解らず、先ず現物で試行錯誤を繰り返し効果を確認して実用の可否を判断した。カッピン・アンゴラ(Panium maximum jacq.)は低湿地を好む牧草で、草が発酵して分解に至る温度は低く長時間を要した。他のカッピン・ゴルドウラ(Melinis muminutiflora Beauv.)やブラッキアリ(Brachiari setegera)等は発酵過程での温度も 高温で堆肥に通気性をもたらし発酵を促進し、近隣の里山に群生繁茂して入手が容易だった。
 その後、菌床材料としては砂糖黍の搾り粕のバカソが実用化され、バカソ80%、稲藁または牧草20%を配合し、更に堆肥の肥効強化剤と発酵促進剤として各種の微量要素を添加して、菌床の堆肥材料はマッシュルーム及びアガリクスに共通した配合仕様として標準化された。
*)菌床材料の具備すべき条件;発酵後の良好な肥効成分、低コスト、堆肥作りの作業性、安定した質と量的供給能力、高温発酵による早期熟成、菌床での菌糸と子実体の成長促進。
*)1975年;台湾系移民によるキノコ村は創設10年を迎えた。過疎地に創設されたキノコ村であったが、今や人の往来も繁く様々な店舗も並び、リオ街道筋は村落の景観を呈していた。学校帰りの台湾系の子供達は地元の仲間に混じり騒ぎ合い、ミニスーパーで食材を求めるご婦人方の多くも、当時の在伯15年の私より遥かにマシなポルトガル語で店員と話合うなど微笑ましい民族同化の一端を窺い知る事が出来た。
 キノコ栽培事業の誘致に伴うキノコ関連作業の雇用創出により現地を潤す収入がもたらした、ささやかだが予測された経済連鎖である。更には台湾系と現地住民との心和む融和の深さの理由を興味深く会得した。
 それは台湾系は誰とでも気さくに良く喋るので言葉の習得が異常に早い。お喋りは国民性や言葉の文法が中国語に類似している事もあるが、お喋りは天性の言葉の習得と人との融和を、極めて自然体で馴致させてくれる常套手段として、我々日本人は大いに見習うべきである。
*)1983年;既述の如く古本は橋本に請われ、農水省熱帯農業研究センター刊行の熱帯農業技術叢書18号「ブラジルの野菜」の章に、「菌類と担子類」を寄稿した。
*)1985年1月21日;橋本先生より古本へのメッセージが邦字紙に掲載された。

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