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痴呆を恐れない(下)=脳血管性痴呆は予防も可=魚介類中心の食生活へ

健康広場

6月2日(水)

 穏やかに発症し、進行がゆるやかなアルツハイマー型については前回紹介した。発症の初期で治療を開始すれば、進行を抑える治療は可能だけに、本人だけでなく家族が早めに症状に気づく必要がある。
 アルツハイマー型特有の症状をもう一度、おさらいしよう。
 (1)同じ事柄を何度も言ったり、聞いたりする(2)無表情でいることが多い(3)話すときに「あれ」「これ」などの代名詞が目立つ(4)注意力が散漫になる――これらが目立ち始めると要注意だ。
 今回は、アルツハイマー型と並ぶ、もう一つの代表的な症状、脳血管性の特徴などを知ろう。
 一般的にアルツハイマー型と脳血管性との割合は六対四だといわれ、アルツハイマー型が多いのが実情だ。
 生活習慣、特に食生活が発症のカギ――。まず最初に別欄(表1)の項目で、自らに当てはまるものをチェックして欲しい。
 この五項目に当てはまる人は三十代や四十代の若さでもすでに脳血管性痴呆の予備軍で、放置しておくと痴呆症か脳梗塞を引き起こす可能性があるのだ。
 それでは、具体的に脳血管性の症状を見てみよう。
 正常な脳の場合は、脳内の欠陥から神経細胞に栄養分が運搬されるが、脳血管性では血管が詰まることにより、その先にある脳細胞に栄養が運ばれず、細胞が死亡。さらに詰まった場所の神経が死亡することで、脳が萎縮し、ボケの症状が出始める。
 通常よりも早く脳が萎縮するアルツハイマー型と異なり、脳血管性では血管が詰まった場所から部分で記に萎縮していく。
 さらにアルツハイマー型と異なるのは、脳出血や脳梗塞を原因とする脳血管性では急激に脳障害が起こるのが特徴である。
 名前を覚えにくくなったり、記憶や計算力などの低下を覚えた場合には、脳血管性を疑ったほうがいい。
 また、情緒が不安定になるのも脳血管性ならではで、ちょっとした刺激で泣いたり、何事もないのに笑ったりする場合も要注意。同居する家族もこうした前兆を見逃さないで欲しい。
 こうした脳血管性にならないためには、まず血管が詰まる脳梗塞を起こさないことが肝心だ。特にブラジルのような食生活では、「無症候性脳梗塞」と呼ばれる症状に気をつける必要がある。具体的に脳梗塞の症状は見当たらないが、将来脳血管性痴呆に発展しうるのだ。
 先ほど挙げた食生活のチェック項目が、無症候性脳梗塞を引き起こす。
 予防は食生活の見直しで可能だ。コレステロール値や中性脂肪値が高いと血管はより詰まりやすくなる。
 こんな興味深い研究データがある。
 漁村に住む人々は農村部よりも脳卒中、心筋梗塞が少ない――つまり魚や海藻類を中心とした食事が、コレステロールや中性脂肪を減らし、健全な体質を作ってくれるのだ。
 具体的にはイワシやアジ、マグロ、サンマなどの青魚にはコレステロールを下げるDHAが、ワカメやヒジキ、昆布類にはコレステロールを排出するアルギン酸がそれぞれふくまれる。
 また、イカやホタテ、エビ、ハマグリにもコレステロールを減らすタウリンが豊富に含まれる。
 肉食が中心で脂っこい料理が多いブラジルの食文化に影響されることなく、魚を中心とした日本食を食べることで、脳を健康に保つことができるというわけだ。
 アルツハイマー型は原因不明だが、脳血管性は脳梗塞などの病気を防ぐことで、予防可。
 また、ぼけ全般を予防してもらおうと、東京のぼけ予防協会では十か条の予防法(表2)を提唱しているので、参考までに紹介する。

 食生活チェック項目

1 肉と魚ならば、迷わず肉を選ぶ
2 満腹感を覚えていても、食事は残さず平らげる
3 濃い味付けが大好き
4 朝食を食べない日が、週に3日以上ある
5 食べる速度が人よりも早い

 ぼけ予防10か条
1 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
2 適度に運動を行ない、足腰を丈夫に
3 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
4 高血圧や肥満などの生活習慣病の予防、早期発見、治療を
5 転倒に気をつけよう。頭の打撲はぼけを招く
6 興味と好奇心を持つように
7 考えをまとめて表現する習慣を
8 こまやかな気配りをしたよい付き合いを
9 いつも若々しく、おしゃれ心を忘れずに
10 くよくよしないで明るい気分で生活を