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大金星のパライーバ

グルメクラブ

2005年8月19日(金)

 「ウン・ボーデ・シャマード・デゼージョ(欲望という名の雄ヤギ)」。
 インターネットでパライーバ州の観光事情について調べていたら、二年前のジョルナル・ド・ブラジル紙の記事と出会った。冒頭の一文はその見出しだ。
 ウン・ボンデ・シャマード・デゼージョなら分かる。米映画『欲望という名の電車』のポ語題だ。
 ボンデ(電車)じゃなくてボーデ(雄ヤギ)か。日本の週刊誌「アエラ」ばりのオヤジなダシャレがブラジルにもあるんだな。
 なぜ「欲望という名の雄ヤギ」なのか。ボーデは、乾燥地帯が広がる同州の生活を支える大切な動物。そこには庶民のさまざまな「欲望」が反映されているらしい。
 その証拠に、ヤギの王様や女王を選ぶ盛大な祭りがあるうえ、ボーデの一語が交じる慣用句(方言)は数え切れないという。
 ブラジルに来たばかりの頃、大きな日系移住地も目立った観光地もないパライーバには行くことが恐らくないだろう。そう思っていたがどうも事情が違うようだ。
 『サンジェロニモ』や『オ・アウト・ダ・コンパレシーダ』といった近年の話題作が撮影されたカリリ。奇岩で有名なカバセイラスなど見所は多いと知った。
 酒の世界にも独自の魅力はあるだろうか。記事に紹介されていたのは、カシャッサとヤギの乳を混ぜて作るカクテルというシッシ・デ・カブラ。ヒメェー(悲鳴)、それはあまり飲みたくないなあ。
 カシャッサ自体の品質はどうなのかも気になった。と思い出したのが、七月のカシャッサ品評会(第二回ハイアット・カシャッサ・アワーズ、グラン・ハイアット・サンパウロ・ホテルで開催)の結果だ。
 国内外から集まった審査員二十五人が六十八銘柄を審査。州都ジョアン・ペソアから百五十二キロ、アラゴア・ノヴァで造られるセーラ・プレッタが大金賞三本の一本に選ばれた。有名ブランドを押しのけての大金星だった。
 創業は一九〇八年。機械を使わず手刈りしたサトウキビを搾るなど、百年近い歴史の中で磨かれた生産技術には自信があるようで、そのホームページに詳細されている。
 今年からラベルとボトルを一新、「最近の傾向にあわせた」そうだが、平凡だ。旧ラベルの明快なデザインと鮮やかな色使いの方が、わたしは好きだな。
 カンタレイラ街589の販売店エスキーナ・ダ・カシャッサでさっそく購入したものの、その矢先に胃を患ってしまい、開けていない。
 「欲望」は、台所の戸棚の中に「停留」したままだ。

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