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58年目の記憶―犠牲者家族から見た勝ち負け抗争―

58年目の記憶―犠牲者家族から見た勝ち負け抗争―(下)=「私の息子を殺したのはあんたか」―溝部氏の母は詰問した

8月19日(火)  銃声を聞いたコトは「今晩の音はえらい近かったねえ」。台所で片付けものをしていたコトは溝部に話しかけた。  隣の組合の住宅に住んでいた非日系の役員がよく猫を追い払うため、空に向けて時折発砲していたため、銃声は溝部家にとって日常であった。  手を拭いながら、寝室に近づいたが、もう横になっていると思っていた溝部の姿 ...

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58年目の記憶―犠牲者家族から見た勝ち負け抗争―(中)庭に用足しに出て被弾=訓練積んでいた実行者

8月16日(土)  夕方に庭先取引の業者がくることはあるが、こんな朝にはあり得ない。愛子夫婦の家は道の突き当たりにあった。  トラックの荷台に甥が乗っており、その手には義理の父からの手紙が握りしめられていた。  「幾太が足に怪我をしたから、トラックに乗ってすぐバストスへ行くように。子供の着物も幾つか持参するよう」といった文面であ ...

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58年目の記憶―犠牲者家族から見た勝ち負け抗争―(上)「国賊」「売国奴」の張り紙―テロ前、溝部家に脅迫状

8月15日(金)  今日は終戦記念日―。しかしブラジル日系社会ではこの時から違う形での戦争が始まったともいえる。日系コロニアで起きた勝ち負け抗争は、様々なかたちで議論、研究されてきた。しかし、犠牲者の家族は声を張り上げることなく、それぞれの人生を歩んできた。今まであまり語られることのなかった家族から見た勝ち負け問題ー。戦後五十八 ...

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