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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】

 アマゾンで豊饒なのは生態系だけではない。過酷な大自然を縦糸に、極彩色の絵巻のような逸話の数々が横糸として織り込まれ、とても豊かな移民史の大河を形成している。並みいる欧米系植民地がアマゾンの厳しい自然に手を焼き撤退していく中、マラリアなどの病害に耐えて日本移民が根付いてきた八十年の歴史は、一朝一夕には語れない。錚々たる大物政治家が関わる中、アマゾン移住は進められてきた。計りきれないほどの血と汗と涙を苗床に、今では森林農業という世界から注目される新しい〃文化〃も芽吹いている。だが、そこに至る道程は楽なものではなかった。ベレン、サンタイザベル、グアマ、トメアスーなどの東部アマゾンを取材し、そんな移民史の一部を掘り起こした。(深沢正雪記者)

アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《7》=ベレンに野菜〃革命〃を=禍福は糾える縄の如し

ニッケイ新聞 2009年9月2日付け  死屍累々にすら見えた植民地の一角に、とんでもない甘美な実をつける新しい芽が吹いていた。  一九三三年、南拓の臼井牧之助が渡伯途上、シンガポール港で南洋種の胡椒苗二十本を購入してトメアスーに持参した。これが南拓の直営農事試験場に移植され、うち二本だけが発芽した。  三五年に南拓が会社整理断交 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《6》=野球で青年奮い立たせる=万感の涙のみ、福原退陣

ニッケイ新聞 2009年9月1日付け  苦難の時代にも娯楽はあった。いや、なければならなかった。トメアスーではそれが野球だ。  『トメアスー開拓五十年史』によれば、サンパウロ州ノロエステ線のアリアンサ移住地の草創時代、弓場農場チームの名投手として鳴らした鎌田讃さんが同地に住むようになったことから野球は広まる。  鎌田さんは一九三 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《5》=「棺桶何個ありますか」=英霊録という〃宝物〃

ニッケイ新聞 2009年8月29日付け  「中村さん、棺桶何個ありますか?」。日本人看護婦長が突然、南拓事務所に現れ、そう尋ねた。 『トメアスー開拓五十年史』には、南拓社員として第一回移民と共に開拓初期を過ごした中村浩三さんの、悲しい逸話が記されている。 悪性マラリアが移住地中に蔓延し、病院は連日患者でいっぱいになり、注射器を持 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《4》=上塚司「極楽も遠くない」=警鐘鳴らす三浦鑿

ニッケイ新聞 2009年8月27日付け  入植が始まった一九三〇年当時、日本でアマゾンは「南米の理想郷」として宣伝されていた。 例えば、元代議士の上塚司は人気の高い大衆雑誌『キング』(三一年六月号)に「大アマゾンの日本新植民地」と題する一文を発表、「台湾九州四国を合わせた大面積の処女地が、日本の植民地として諸君の開発を待つ」とぶ ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《3》=苦難続きで78%退耕=極限まで体力消耗し罹患

ニッケイ新聞 2009年8月26日付け  移民は生まれた環境に近い場所を選んで定住する傾向がある。沖縄系なら海に近いジュキア線、ドイツ系なら南部三州に集住した。祖国での経験が活かせることを本能的に察知しているのだろう。 だが時に冒険もする。まったく違う環境、例えばアマゾンに挑戦したりする。しかし、人は往々にして持って生まれた習慣 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《2》=黒水病で両親失う=前人未到の原始林に斧

ニッケイ新聞 2009年8月25日付け  一九二九年九月二十二日午前八時半、第一回移民の四十二家族百八十九人がアカラ植民地(現在のトメアスー移住地)の波止場に到着し、前人未踏の原始林に開拓の一斧を振り下ろした。 沢田哲さん(さとし、90、熊本県)は、「本当は第一回移民で来るはずが、トラホームで引っかかって神戸の移民斡旋所の六カ月 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《1》=移民のアマゾン絵巻=大河のごとき流れに

ニッケイ新聞 2009年8月22日付け  アマゾンで豊饒なのは生態系だけではない。過酷な大自然を縦糸に、極彩色の絵巻のような逸話の数々が横糸として織り込まれ、とても豊かな移民史の大河を形成している。並みいる欧米系植民地がアマゾンの厳しい自然に手を焼き撤退していく中、マラリアなどの病害に耐えて日本移民が根付いてきた八十年の歴史は、 ...

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