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援協役員選挙の行方=和井会長、辞意発言目立つ=では、誰が適任なのか

1月17日(金)

 三月に役員選挙を控え、サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)は十六日の定例役員会で選挙管理委員会を発足、新役員の選出を本格化させた。八十九歳の和井会長が高齢を理由に今期限りでの勇退をにじませる発言をしており、候補者選びは難航する可能性も出て来た。今年度予算約三十億円を計上、日系最大の団体だと自負する援協。舵取を誰に託すのか。役員選挙の行方を探った。
 「もう、辞職しますよ」。自身の出処進退について、和井会長はよく、そう答える。公の場でも、「もう棺桶がそこにきている」との発言が目立つ。
 実は、〇一年の選挙で、辞意を表していた。
 援協はスザノイッペランジャホームの新築(昨年七月竣工)、日伯友好病院の拡張工事(工事中)を予定。日本から資金援助を引き出すつもりだった。
 そのため、国際協力財団、日本財団とつながりの深い和井会長に、続投を要請。同会長もそれを受けた。
 両団体との交渉は実を結び、日本財団が施設の新築費を助成した。国際協力財団も拡張工事への協力を確約。送金を待つ段階となっている。
 和井会長は周囲の期待通りの役割を果たした。
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 経済力と人脈。援協会長に最も必要とされるものだろう。
 会長としての社交費が一カ月に千レアルで個人で負担しなければならない。さらに、事あるごとの寄付、協力券リッファの販売や負担などを含めれば、一年間に、数万レアルは下らない。
 援協は、純然たる老人ホームを四施設、経営。友好病院も、「日伯両語で診察を受けられること」を売り物にし、日本と切り離すことが出来ない。
 移住者保護謝金の受給、医療機器の購入など、日本からの援助をまだまだ、必要としている。和井会長は東京外大出身で政府機関をはじめ、多方面に顔が利く。
 五人の副会長に、和井会長と同様の貢献を求めるのは、今のところ無理だろう。「和井会長が何らかの形で、援協に止まってもらわないと困る」(関係者)。
 名誉会長か友好病院経営審議会会長として、援協を支えることになりそうだ。
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 では、会長には誰が適任なのか。
 「菊地義治第五副会長(六一)でいこう」との声を聞く。援協理事に入ったのは九七年でまだ、日は浅いも、各種式典、行事への出席率が高く、本人が自家用車を運転して、自由に移動できる。協力券リッファの販売も積極的にこなす。
 つまり、時間、金銭の自由が効き、健康だ。和井会長からの信頼も厚い。
 しかし、戦後移住五十周年記念祭実行委員会で財務を担当、二足のわらじをはくのは、困難だ。本人自身、「戦後移住五十周年で手一杯」と、もらす。
 尾西貞夫第二副会長(五九)、森口忠義第四副会長(六八)ともに約二十年、理事会に携わっている。和井会長よりも援協との関係は古い。副会長の中で最も、業務に精通しているはずだ。
 尾西第二副会長は、リベルダーデ商工会の元会長。同区内に土産物店を構えていることから、小切手の署名など事務的な仕事をよく任せられる。
 特別企画委員会長としてリッファの発行、販売に奔走するも、「貫禄がない」との指摘もある。つまり、本人の実力とは関係なく、若さがネックになっている。 森口第四副会長はマッケンジー大学教授。牧師でもあり、公私ともに忙しい。援協主催行事への参加が少なく、時間が取れない。
 野村次郎第三副会長もモジ文協会長を兼任。さらに、健康上の問題を抱え、サンパウロまで通うのは厳しい状況だ。
 順当にいけば、酒井清一第一副会長(七四)だろう。ビリグイ市出身の二世で日伯両語に通じる。八七年から理事。常任理事、副会長と地盤を固めてきた。
 日伯友好病院経営審議会副会長。サンパウロ大学工学部を卒業後、長年、フィリップスで幹部を務め、経営手腕も信頼できる。世代交代の流れにも沿う。
 が、日本側に顔が効くかとなれば、疑問符がつく。大分県人会会長と言え、二世という世代がどう評価されるのかが焦点となりそうだ。

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