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コラム オーリャ!

 「科学者よ驕るなかれ」。十七年前、法廷で一人の漁師が訴えた。
 高速増殖炉「もんじゅ」について国と闘い続けてきた原告団長、磯辺甚三さん(九三)だ。
 もんじゅのある福井県内に暮らす磯辺さんは、一九八五年に福井地裁に提訴。以来、原子力の危険性を訴え続けてきた。
 車いすで原告団の先頭に立ちながらも、全面敗訴した三年前の同地裁。閉廷後の会見で、磯辺さんは「乗りかかった船だから」と海の男ならではの言葉で決意を示した。
 先日、原告勝訴の逆転判決を得た控訴審では、原告団の中に磯辺さん男の姿はなかった。
 しかし、司法の壁を突き崩したのは紛れもなく彼の強い意思だ。
 クローン人間誕生やシャトル事故など、科学のあり方が問われる昨今。
 今一度、磯辺さんの言葉をかみ締めたい。(記)

03/02/08

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