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日本移民史料館=T化目指すも…=進まない分類整理=ホームページ=データベース=計画目白押し=新生文協の重要な課題

5月28日(水)

 文協が運営するブラジル日本移民史料館(大井セリア館長)は、来伯日本人はもとより、ブラジル社会に日系移民史をアピールする存在として、日に日にその重要さを増してきているが、肝心の所蔵資料の分類整理は遅々として進まないのが現状だ。に加えて、最近は収蔵品のデータベースを作成、それをホームページ化してインターネットに公開するプロジェクトも平行して進められているが、様々な問題が山積している。文協本体の改革と共に、日系社会の〃顔〃ともいえる史料館へのてこ入れは新生文協の大きな課題といえそうだ。

《収蔵品の分類・管理》
 日本移民史料館に昨年度訪れた来場者は、七千七百八十五人に上る。学校の授業や観光グループなどのコースに組み入れられている場合も多く、日系社会の〃顔〃としてブラジル社会に定着しつつある。
 一方、亡くなった一世の家族が、故人の蔵書を寄贈するなどして集まった資料や、家具・農機具など収蔵品の管理・分類・整理は遅々として進んでいない。現在の収蔵場所が満杯で新しい場所が必要、分類などの史料館業務の専門家がいない、という問題もある。
 現在までは、寄贈された日付などを覚えていれば、リブロ・デ・エンボ(受け入れ台帳)で探すか、検索カード(分類、タイトル、寄贈者別に作られている)を調べるなどの方法が取られていた。しかし、それもここ数年書かれていない状態で、その間寄贈されたものは〃記録上〃存在さえしていない。
 日系社会を研究する上で欠かせない貴重な資料群だが、どこに何があるかは、中山保己副館長の記憶に頼っているのが現状だ。
 大井館長によれば四、五月に史料館を訪れ、正式に資料請求した人は三十三人。「論文などに日系社会を取り上げる学生や研究などのため、史料館を訪れる人も多い」という。
 「最近でもジェトゥーリオ・バルガス財団の関係者が『日系社会における福祉』についての調査に訪れた」と史料館の価値を強調する。
 《 データベース作成》
 収蔵資料をコンピューターに登録し、ホームページ(将来的には日、英、ポ語による)として一般公開することは、ここ数年来の懸案だった。
 インターネットを通して、世界中に情報を提供できるという意味で、ホームページ作成は日系社会全体にとっても有益といえる。例えば米国ロスアンゼルスの日系人博物館にはすでに、評価の高いホームページがすでにある。
 ホームページに掲載するためのデータは、まず史料館内のコンピューターにデータベースを作成し、それをインターネット上にアップロードするという順序になる。
 つまり、まず史料館内のデータベースが必要だ。「日系社会のために何かしたい」と考えていたKDDIの岐部ルイス副社長は、昨年の十月から同社の二人の専門家と共にデータベースのプログラムを作成、今年完成した。
 プログラムはただの〃器〃であり、登録データという〃中身〃を入れなくては役に立たない。現在までに登録されたデータは、テスト的に入力されたもののみ。全所蔵物のほんの一部に過ぎず、これから地道が待っている。
 《ホームページ化へ》
 ホームページ以前に、データベース作成には館内のコンピューター・ネットワークが必要だ。ネットワークを作るには要となるサーバー機が必要だが、肝心のそれがないので、まだ本格的データ登録ができない。
 すでにサーバーに使うコンピュータはあるが、サーバー用ソフトが四千レアルと高額なため、大井館長はマイクロソフト社に「寄付してもらえるよう交渉中」。史料館担当の吉岡黎明第一副会長は「ソフト購入については財務の方との話し合いが必要」とコメントした。
 《今後の課題》
 これからも一世の資料が史料館に届けられる限り、日本語の読み書きできる人材は必要だ。中山副館長は今年十月で定年退職を迎える。引き継ぎ作業などが必要なため、後任探しは急務とされており、吉岡第一副会長は「中山さんの後任はすでに検討中」と話している。
 文協改革委員会の提言にあるように、文協がブラジル社会にアピールする存在になるためには、史料館の役割は重要だ。文協本体の改革と共に、史料館に対するより一層のてこ入れが今後の課題といえそうだ。

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