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コラム 樹海

 「バグダッド郊外、日系米兵で初の死者、加州出身ナカムラ伍長」―米国の邦字紙「北米毎日」(サンフランシスコで発行)の先月末の記事である。日系社会面で小さく扱われていた。わたしたちブラジルの邦字紙では、まず書くことがない記事だ、とある種の感慨を持った▼記事によれば、同伍長、ポール・ナカムラさんは戦闘員でなく、医療中隊に所属していた。負傷兵を搬送中、ロケット弾攻撃を受けて死亡した。ブッシュさんによる戦闘終結宣言のあとも、米兵の死者はあとを絶たない。イラクの特殊事情のせいだ▼ポールさんは米国生まれであることをいつも誇りとし、家族の反対を押し切って米陸軍に志願、入隊した。戦死の前、最後に家族が電話で話したのは父の日だった。「シャワーを浴びて、夕食にステーキを食べたよ」と野戦の場から家族に罪のないウソをついたという▼日本は、米政府からイラク復興支援を行うよう要請されている。兵員を派遣できるよう特別措置法をつくる。すでに衆院を通過した。陸海空の三自衛隊一千人規模が半年派遣される。一千人は志願者でない。戦闘員でもない。だが、戦闘員でなくてもポールさんのように砲弾の目標にされる可能性は否定できない▼死者が出れば、日本での報道の大きさは、「北米毎日」の比ではあるまい。当事紙は事実を直接報道しなければならないのは、いうまでもないが、そうしなくてもいい立場にいれば、ほっとするのも正直なところである。(神)

03/07/18

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