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旧ブラ拓が極秘に隠した書類―40年余り経て〝陽の目〟―移民との貸借契約書などーバストスの製糸工場地下室に

 ブラジル拓殖製糸会社(バストス市)の部品工場で、このほど、旧ブラジル拓殖組合が戦前、移住者と交わした消費貸借契約の契約書や移住者の不動産取得状況が記された書類などが見つかった。ブラ拓は五八年に解散。行き場を失った品物が五〇年代後半、極秘に同工場(旧綿花工場)地下室に隠された。四十年以上経ってようやく、封印が解かれた。
 日系人の住宅事情を調査中のアラキ・ヒロコさんが先ごろ、来伯。バストス・ニッケイ文化体育協会日本語部長の大高治夫さん(六六、群馬県出身)に古い資料が残されていないか照会した。
 ブラ拓の解散前、製糸、銀行、不動産などの各部門は改組、独立した。ブラ拓の〃遺産〃には個人情報が盛り込まれていたため、処分の在り方に関係者らは困った。知恵を絞った結果、旧綿花工場の地下室に保管することにした。
 入り口には鉄板をはめ込み、コンクリートで固めた。「地下室の存在を知っている人は現在、おそらく、数える程しかいない」と大高さんは言う。
 大高さんは五五年に、旧ブラ拓撚糸部門の技術者としてブラジルに渡伯。関係書類の封印時、同社に就労していた。アラキさんからの問い合わせに対し、機密事項を打ち明けて良いかどうか一時、迷った。だが既に、〃時効〃にかかっていると判断した。
 地下室は三室あり、最奥の部屋(八メートル×八メートル)に、木箱三十~四十箱があることが確認された。室内は湿気が強く保管環境が悪かった。そのため、書類を手にしただけで、ぼろぼろと破け落ちてしまうという。
 契約書は昭和一桁代のものが目立つ。正確な年は判別出来ないが、事業計画書も見つかり、織物や染色部門にも触手を伸ばしていこうしていたブラ拓の姿がうかがわれる。
 このほか、剣道の防具やテニスラケットなど戦前に使われたとされるスポーツ用品が含まれていた。
 書類は傷つきやすく、容易に運び出せない状態で、現状のまま、保管されるという。

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