10月8日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】ロベルト・アマラル科学技術相は六日、ブラジルは二〇〇四年からウラン濃縮計画をスタートさせ、二〇一四年からは濃縮ウランの輸出も視野に入れていると発表した。政府の目標では二〇一〇年までに、アングラ・ドス・レイス原子力発電所の核燃料の六〇%を自給するとした。原子力利用を平和目的に限定しているが、核兵器開発につながる技術だけに、米国や周辺国の懸念を呼ぶ可能性もありそうだ。
濃縮ウランの遠心分離法による製造技術を有しているのは現在、日本やロシア、中国。これにユレンコ核連合を構成している英国、ドイツ、オランダなど六カ国だ。ほかに米国やフランスが、旧式のガス分離方式での技術を有している。
核公団(INB)の情報によれば、ブラジルは世界第三位の核資源保有国。二〇一〇年までに核燃料を自給し、二〇一四年から輸出を行い、アングラ第三原発を立ち上げるという。
濃縮ウランは、ブラジル海軍が原子力潜水艦の燃料用に研究開発を行っていた。現在は国連の原子力機関(IAEA)から濃縮度四%までを許可されている。海軍との間に二億五千万レアルの開発契約と民間三社の企業連合に対し二千七百万レアルの開発契約で二つの技術開発計画がある。
核燃料が自給できると、十四カ月ごとに千二百万ドルの節約になる。現在は採掘したウラン鉱石をカナダへ運び第一加工をし、さらに欧州へ持って行き最終加工を依頼している。今後独自の技術開発により、国威の発揚にもつながる。
濃縮ウラン製造用の機器がリオ州レゼンデ市に設置され十月、試運転を行う。INBは、二〇〇四年から生産予定。原子炉は一九九九年に設置され、稼働のための予算割り当てを待っていた。核燃料生産のための技術は八〇年代に実験を終了して、理論的には態勢ができていたという。
ブラジルはこれまで、人材育成に多大な投資をしており核計画の始動を待っていた。しびれをきらしていた科学者らは、ようやく春到来と政府の決定を歓迎している。アマラル科技相は一月、ブラジルは将来に核爆弾の製造能力を獲得する可能性を排除しないと発言して、周辺国の反発を受けた経緯がある。
しかし、核爆弾製造レベルの技術開発は行わないと再度、確約した。あくまで原発用や医療用、農業用の三%から四%濃度のものにとどまる。核爆弾用には、濃度九〇%以上が必要になる。四%はショッピング・センターの中を懐中電灯で照らす程度のもの。核弾頭は今日、ウラニウムでなくプルトニウムを使う。
ブラジルでは一九八九年、海軍技術部とサンパウロ大学核研究室(IPEN)が秘密裏に核燃料の生産技術開発を行い、製造サイクルは把握していた。技術は数百台以上の超高速遠心分離機を使って、次々と濃度を高めていく。この遠心分離機の製作と設置が、極秘とされる。INBは、海軍開発の遠心分離機の提供を受ける予定となっている。