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心の距離を一気に縮め=紀宮さま ヒガシ小学校へ=オイスカ植林事業もご視察=ウルグアイを無事ご出発

11月22日(土)

 【モンテビデオ市発=下薗昌記記者】ウルグアイを公式訪問中の紀宮さま(清子内親王殿下)は二十日、同国で最後の視察地となるラバジェーハ県とモンテビデオ県をご訪問され、林業の実態や子供たちに対する植林啓蒙活動をご視察された。また、最後の訪問地となるモンテビデオ・ヒガシ小学校では、日本人教育者が指導する自閉症児の教育現場にも足を運ばれた。同日夜に次の訪問地となるホンジュラスに向けご出発された。地理的には一番遠いとされるウルグアイと日本の地理的な距離。市民らの「心の距離」は紀宮さまのご訪問によって一気に縮まった。

 前日の十九日にロチャ県のオンブーの森などで野鳥観察をされた紀宮さまは、二十日午前十時すぎに、ラバジェーハ県ミナス市にご到着。同市は、牧畜国ウルグアイで一九三〇年代半ば、最初に林業としての植林がされた地として知られる。一面を見渡せる丘の頂上で、植林に関わる事業家のディアスさんとウルグアイ技術研究所顧問の太田貞明さんが、当地の林業の歴史や日本の技術協力などを説明した。
 グロブルスユーカリは、成長が早いため、当地では植林で主に導入されている。太田さんは「殿下はユーカリの性質に詳しくないと出来ない質問を返された」と紀宮さまのご質問に感心していた。
 一面を緑に囲まれた丘には、平日朝にも関わらず、市民ら約百人が紀宮さまの周りを取り巻いた。「ケ・リンド(何て華麗なんだ)」を連発する市民が拍手で見送る中、紀宮さまはオイスカ・ウルグアイが実施する「子供の森プロジェクト」が行われた第三十四小学校に向かわれた。
 オイスカ・ウルグアイは、林業の概念がほとんどない同国で林業を普及させるには、未来を担う子供たちへの啓蒙が不可欠と判断。九六年から国内の三十九小学校で同プロジェクトを実施、校庭内で植林を進めてきた。ご視察の地となる第三十四小学校は、評価の最優秀校になっている。
 子供の森では、オイスカ・ウルグアイの国際理事、三上隆仁さんが紀宮さまに事業について説明。建国の父アルティガスを象徴するイビラピーラの木を前に、三上さんは「小さな子供たちに植林思想を啓蒙することが、貧困対策や近代アグロ・インダストリー国家の基礎となる」などと目的を語った。
 生徒らがフォルクローレを披露した後、紀宮さまはヤマザクラを植林。生徒や保護者らは、手を振って別れを告げた。
 同国最後の公式行事となるモンテビデオ・ヒガシ学校には、午後四時二十分ごろご到着。九四年以降、自閉症児の自主性を重んじる教育法を取り入れた同校で、生徒らの学習の様子や、社会に出てからも役立つような勤労作業をご視察された。自らの子供が同校に通学するマリアナ・ディエゴ会長と同校の教育の基礎を築いた三枝たか子さんが教育方針や活動内容を説明した。
 二年前に東宮御所で、紀宮さまと話した経験があるという三枝さんは、十年に渡って同校生徒の教育に尽力。紀宮さまは三枝さんに「ウルグアイの自閉症の子供をよろしく」と激励されたという。
 生徒や保護者らと記念撮影後、紀宮さまは再びヤマザクラを植林された。「チャオ、チャオ」と手を振る関係者の見送りを後に、ウルグアイでの公式行事を終えられた。
 午後七時過ぎにカラスコ空港を出発された紀宮さまは米国マイアミ経由で二十二日にホンジュラス入り。大統領のご訪問やマヤ文明遺跡のご視察などをへて、二十八日に帰国される。

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