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〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=3=冷夏でも野菜できた=土作りの原点忘れなかったから

11月28日(金)

 還暦を越えた今、これからの人生、恩返しをしなくては。月に二~三回、日本で講演活動してます。全て手弁当でやっている。この気持ちを忘れないでやっていきたい。何度でもブラジルへ飛んできます。今まで儲けさせてもらったんです。少しでもいろいろな人に返せればと。
 一昨年、農林大臣官房審議官がうちに来たいと言う話で、「泊めてください」と部下を二人連れてきた。昨年は、クロネコヤマトの会長さん、八十四歳が頭を下げにきた。日本の財界の素晴らしい人だが、普通にお相手しました。
 長野県知事の田中康夫さんも七月に、部課長クラス十人連れてきたので、言いたいこと言いました。それが評価されて、地元でも講演依頼がきます。
 当たり前の農業をしているだけなんですが、今の日本の農業は楽をして、原点を忘れてしまっている。私は将来、日本の農家の八〇%が倒産するのではないかとみている。日本も砂漠化が始まっている。
 今年の夏は冷害で、ほとんどの農家でモノができなかった。農業試験所の場長さんらが、長野の野菜産地を視察して回って、最後にうちにきて、立派な野菜ができているのでビックリしていた。
 楽をしていたため、土作りという最も大事なことを無視していたんです。もっと勉強して、原点に戻って頂きたい。こういう年にこそ、儲かる農業ができるのです。三~四倍の値段になりますから、うちと取引きするスーパーも客が殺到して儲かる。
 研修生預かっても、あまり難しいことは教えられない。「農業は体で覚えろ」「黙って私のやることをみていろ」と言ってます。私を乗り越えたら免許皆伝だといってますが、今まで負けていません。一年に二十~三十人くらい応募してくるが、そのうち二~三人を選んでいる。日本人は研修生をお客さまにしちゃうから大変になる。本来、あっちが頭を下げなきゃいけない。
 六十三年間生きてきて、一度も悪いことありませんでした。悪い事あっても深く考えないから、深みに落ちない。人生を楽しく、夢を持って暮らせば、最高の人生が送れると思う。だから、自分の夢はこうだと、思いついたらすぐ人に言うんです。そうしたら、自分も本気で頑張る。今まで挫折したこともありません。一介の山の中の人間が、日本の大手商社を動かしたんです。
 自分の品物を畑まで取りにこいと、日本で言っても信用してもらえない。十六年前、愛知県豊橋市に五店舗を持つ中堅スーパーのサンヨネさんが、家まで取りに来てくれた。片道五時間もかかります。夏場はうちの野菜中心に運んで、いろいろ庭先渡しをやっている。そこからサンヨネさんの取引きは広がり、だんたん地域丸ごと産直のような仕組みになっていった。
 また、値段を相手に決めさせるんです。そうすると、「どうしましょうか」と相談に来る。そこで「農協の平均単価を目安にしてくれればいい」と答えると喜んでくれます。他のスーパーと同じ値段で、新鮮で日持ちする美味しい野菜が売れるから競争になるわけです。
 一方、うちはうちで、その値段で儲かる。他の農家は、段ボールに詰めて、市場まで運んで行ってる。うちはそれをやらなくて良いから、その分儲かる。そして環境問題も全てクリアーしている。

■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=1=野菜づくりでバラ色の人生=儲かって将来性がある
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=2=「近代農業」からの脱却=いい土作るためにいい堆肥を
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=3=冷夏でも野菜できた=土作りの原点忘れなかったから
■〝正しい農業〟=横森正樹さんの熱い思い=4=ブラジルは最後の食料基地=すばらしい時代が来る
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