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会議所=年末は強盗に注意を=地獄の沙汰もアミザーデ次第?!

12月6日(土)

 師走は危険―。ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)が、最近あった電撃強盗の被害例をあげ、盗難や強盗の増加する年末に向けて警告情報を発している。
 十一月二十八日正午頃、会議所関係者の日系若手弁護士(三二、二世)がサンパウロ市ピニェイロス区レボーサス通りとコエーリョ・モラット街かどの交差点で、道路脇に停車していたところ、二人組強盗が車にもたれかかるようにピストルを突きつけドアを開錠させ、後部座席に乗り込んできた。
 財布を取上げてブラジル銀行のカードがあるのを見ると、ラルゴ・ダ・バタタの同支店へ行くよう命令。日系弁護士に暗証番号を訊き、一人がカードをもって引き出しにいくが失敗。「おまえ、嘘の番号教えたな」と興奮して戻ってきたので、同弁護士が同伴して、今度は限度額の一千レアルを引き出した。
 その後、十~十五分程度近隣を走り回ってから開放された。気が付くと誘拐されてから一時間半も経っていたという。
 同弁護士は助かった理由を次のように挙げる。(1)拳銃を突きつけられても努めて冷静さを保つ。(2)相手となるべく対話を途切れさせないようにし、アミザーデ(友情)を作る。(3)相手は近隣の銀行の所在地を調べ尽くしているので、道に迷ったふりをして時間を引き延ばすような小細工はしない。
 具体的には、強盗との間でこのような会話があった。車の後部座席には、吊り掛け式の乳母車が置いてあるのを見て、強盗の一人が「お前、子どもがいるのか?」と聞いてきた。「ああ、いるよ。今ちょうど八カ月になったばかりなんだ」と答えると、「俺も小さい子どもがいるよ」と強盗は言ったという。弁護士は「俺を無事解放してくれたら、それを持って行ってもいいよ」と勧めた。すると「いいよ」と断った。
 続けて「どうしてそんなこと(強盗)をするんだ?」と尋ねたら、「失業のせいだ。仕事がなくなっては、どうにもならないよ」。話し続ける中で、強盗は「俺たちも仕方なくこんなことをやってるけど、キミならこの金だってすぐに取り返せるよ」と妙な慰め方をされる仲にまでなっていたという。ただし、同弁護士は「これも相手次第。無口な連中なら、無理に話しかけないほうがいい」と忠告する。
 会議所関係者は「強盗に制圧された後は、下手にジタバタしない。いかに相手とアミザーデらしきものを芽生えさせるかが、死地に活路を求める最良の方法。悪い冗談みたいになるが、ブラジル人は、いつ、いかなる場合でも、いったん生まれたアミザーデを大切にする。さしずめ、地獄の沙汰も金、いやアミザーデ次第のような気がしないでもない」という。
 年末に金が入用になるのは強盗も一緒。この時期は、さらに用心するに越したことはなさそうだ。

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