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コラム 樹海

 サンパウロ市イタケーラ区内で、恵まれていないが、やる気のある子供たちのために、無料の日本語教室が開設されている、と伝えたところ、意外な反響があった。これは、あって欲しくなかった▼私塾と思われるほかの日本語学校から、ブラジル日本語センター本部に対して「こんなこと、あっては困ります」――。反響というのは、おおよそこういう苦情だった▼気持ちはよくわかる。センターは公的機関だから、物言いをつけやすい。センターとしては、まさかの〃伏兵〃に遭遇した状況である。ずばり、「あなたのほうが間違っている」とは対処できない。「まぁ、生徒(の層)が違うことですから」ぐらいにしか応えられない▼「無料」についてだけいえば、商業の世界ではよく行われている。ただ、善意や厚意ではない。タダで製品・商品をばらまく、営業作戦の一環だ。だから、同業は内心苦々しくは思っても、それを表にすることはない。日本語教育は商品でないからこそ、反響が生じたというべきか▼イタケーラの無料日本語教室は、主宰者側が(教えようとする)生徒を選んでいる。最初はデカセギのための日本語会話学習希望者が押しかけたようだが、いまは違う。無制限でない。学ぶ気持ちの強い者だけを受け入れる。もとより外部からの多少の抗議などには動じないであろう▼それにしても、世の中、難しい。「無料なんて困る」と苦情が持ち込まれた際、あなたならどうする、と読者のみなさんにも問うてみたい。(神)

03/12/12

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