ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 二〇〇三年(平成十五年)日本政府秋の叙勲における、ブラジル国内の日系人受章者は、いつもと違い、ほんの少しだが特徴があった▼従来圧倒的に多かった、日系団体の指導者として地域社会発展に貢献、という受章理由以外の人が二、三見受けられたからである。つまり、元会長とかの肩書がない、農業技師、空手指導者、美術活動実践者が含まれていた。受章者が十人と多かったが、そのなかに三人もほかの畑の人がいたのは珍しい▼ひところ、受章の〃基準〃の一つに、県人会長経験者、があった。これは明らかに弊害をもたらした。猟官運動ならぬ猟県人会長運動が生じたからである。在外公館側による是正があって、その後弊害は改められ、まともになっている▼移民社会(一世社会と言い換えてもいい)では、三人集まると会ができ、いうところの御山の大将が誕生した。叙勲の対象にも団体の長は推薦されやすかった。こつこつと農業者を指導し、農作物の品種改良、栽培技術改善につとめた人、近年日本文化ともて囃される武道の指導者、さらに画家・彫刻家などは、周囲の一部がその功績を認めながらも、対象にはなりにくかった。単に団体の会長がいつも上位だったのである▼幸い、ちかごろは、日本政府は、自薦でもいいとか、大いにほかを推薦しろ、といって、授章対象を発掘する姿勢である。せっかくだから大いに応じ、ほかの異色の畑からの受章者がもっと出るようにしたいものだ。(神)

03/12/19

image_print