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世知辛い世はサルよう

新年号

04年1月1日(木)

 「見ザル、言わザル、聞かザル」。今年の干支、申(サル)から連想するものを街で聞いたところ、そういう答えが多かった。見て見ぬふりをする、世知辛い世の中の反映かと考えた。
 外宇宙の探査船が二千年かけて降り立った惑星。そこは猿の支配する星だった。〃害獣〃である人間は狩られた上、剥製が展示される。「神は自分になぞらえて猿を造った」。SF映画の大作、『猿の惑星』(一九六八)のストーリーだ。人間と猿の立場が逆転、作品には痛烈な文明批判が込められている。
 二〇〇三年五月、ブラジルで絶滅が危惧される動物は三百九十五種だと発表された。前回の調査時(一九九〇)が二百十八種で十三年間に一・八倍増加。問題は深刻化している。
 猿の仲間でリストに入るのは、ミコ・レオン・ドウラードやマカコ・アラーニャなど二十六種。原因はもちろん、森林破壊や違法狩猟だ。NGO(非政府組織)などによって懸命な保存運動が展開されている。
 人間世界はどうか。テロ、国内紛争が多発、人々は貧困や失業におびえて暮らす。元難民高等弁務官の緒方貞子氏(国際協力機構理事長)は「人間の安全保障が必要な時代」だと位置付ける。
 今年は申年。様々な危険が〃サル〃よう願でもかけてみようか。

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