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コラム 樹海

 手紙についてである。いまどきは、パソコンを扱える人たちはEメールで用件のみを伝えるのが普通だろうが、本紙の読者層の中核に当たる年代はいまだ自筆、肉筆かと思われる。手紙への関心は高いだろう▼次の文章が(日本の)中学生の手紙だそうだ。北海道新聞のコラム「今日の話題」が手紙文の書き方にふれ、教師の指導がぞんざいだ、いっている▼「拝啓 ××の候、みなさまにおかれましてはますますご健勝のこととお慶び申しあげ…」「追伸 皆様のご健康と貴殿の一層のご繁栄を…」▼新聞社を見学した生徒たちからの礼状だが、届いた七通すべてが、判で押したように同じだったことに対する批評である。手本が示されたのだろうと推察した。ひところなら「手紙の書き方」のルールどおりだから、お利口さん、よくできましたと評されるだろう。独創が重んじられる現代は違うのである▼こどもたちが学ぶべきは、こうした大人社会にはびこる「虚礼」ではなく、お礼の気持ちを率直にきちんと伝えることだろう、という。新聞社見学は「自ら学び自ら考える力の育成」を掲げる総合学習の一環で行われたようだ。一律の虚礼の文章では学習がまるで生きてないということだ▼ある程度、年配になると、身についている手紙文を打ち破って奔放に書くのはかえって困難になる。それでも、形式を打ち破って気持ちのおもむくまま書くことは一面楽しいことでもある▼「拝啓」で始まらない手紙をたまには出してみたい。(神)

04/01/23

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