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英国で好評のメロン生産=リオ・ グランデ・ド・ノルテ州=モソロで活躍、大谷さん夫妻=S・M・アルカンジョから移住=手探りで現在を築く

3月 6日(土)

  英国ロンドンの果物屋に行くと、店頭でREAL商標の黄色と濃い緑色のメロンが目につくはずだ。メロンにはOTANIと書かれたラベルが貼ってある。これは間違いなく、ブラジルのリオ・ グランデ・ド・ノルテ州のMossoroにある大谷農園で生産された極上の甘いメロンだ。品 種はYellow HoneydewとPiel de Sapoだ。
 Piel de Sapoは〃蛙の皮〃という意味だが、味は蛙がうらやむであろう蜜がとろけるような上品な味と香りのする逸品だ。これらのメロンを生産しているのが大谷正敏さん(愛知県出身)で、福岡県出身の節子夫人(旧姓・入来田)と二人三脚で取り組んでいる。
 大谷さんは一九六〇年にブラジルに移住し、当初はサンパウロ州サンミゲル・アルカンジョにいたが、八三年にモソロに居を移し、九〇年に独立して節子夫人と未知の分野に踏み込んだ。先達の日本人が殆どいない地域なので、すべて手探りで築きあげてきた。
 今では約八百五十ヘクタールにメロンを順次栽培して、七月頃から翌年一月下旬までの約八カ月間、週平均二万五千箱を出荷できる体制を作り上げてきた。大きさにより一箱六個~八個入りである。輸出先は英国が中心となっている。数人の日本人仲間とREALグループを結成している。当初はNIPPONという商標だったが、殺虫剤の商標と重複するため、英国で拒否され、REALに改名した。
 今年の初め、順風満帆の流れの中で天の警鐘を受けた。二十年降りといわれる大雨で収穫期を迎えたメロンが水浸しになり、今期最後の英国への出荷の断念を余儀なくされた。大谷さんは言う。「想像を越えた被害でした。でも、雨は地下水の補給にもなり、畑を清めてくれました。これを教訓に、メロン単作から綿や飼料用モロコシ(ソルゴ)などを含めた複合農業に乗り出すつもりです。自然に合わせる農業に立ち返ります」。
 有機肥料栽培を行っているため、鶏糞などの堆肥素材を地元の養鶏業者から購入しているが、その業者から飼料用作物の栽培を要望されていたので、今回の天の警鐘を機に要望に応える決心がついた、という。同時に、輸入業者に合わせる生産ではなく、自分の裁量に合わせる農業の確立を優先させることにした。
 大雨の被害をプラスに転換しようとしている勇気ある日系農家の笑顔がまぶしい。

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