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サヨナラ工場勤務=独立起業するデカセギたち=浜松

5月5日(水)

 デカセギから自営業者へーー。工場勤務に区切りを打ち、資格や経験を生かし独立起業した二組のデカセギを一日付インターナナショナル・プレス紙が紹介している。デカセギの間に独立志向が目立ち始めた背景には、日本定住への意識の高まりが透けて見える。
 ミゾグチ・ノブヒコ・エヅソンさん(五五)は浜松市内で家電の修理業を立ち上げた。日本に来る前、ブラジルで二十五年間、業務用エアコンや冷蔵庫を修理する仕事をしていた経験を生かしてのことだ。
 特殊工具、ガス、酸素ボンベといった「商売道具」をどこで購入したらいいのか分からないなど開業当初は苦労の連続。必要道具の購入費用には出稼ぎで貯めた七十万円を充てた。だが、「好きな仕事が出来ている上、工場勤務時よりも貯金ができる」といまの幸せを喜ぶ。
 同じく浜松市在住のシライネ・テイシェイラさん(四二)、ルイス・カルロス・ジアスさん(四三)夫婦は衣料の訪問販売をしている。平日の営業活動は夜に限られる。顧客であるデカセギたちが帰宅する時間を狙って訪問する。
 衣料品の訪問販売は実は、過当競争気味。それでも、ジアスさん夫婦は、「初めのころはお客の好みがわからず苦労したが、お得意さんも増えた」と話し、商売は順調のようだ。
 夫婦は衣料産業が盛んなパラナ州のシアノルテ市出身。同市に住む人と契約し、十五日おきに買いつけた衣料を日本に郵送してもらっている。「ブラジル政府の簡易輸出プログラムを利用して安く輸入できるが、日本の税関は大変厳しい」とジアスさん。
 また、「工場勤務のように働く時間は決まっていないし、パトロンもいない。余程好きでないと続かない」と夫婦口をそろえる。
 展示会やファッションショーに衣料を提供するなど、流行や業界動向の研究にも余念はなく多忙の日々を送っている。
 「工場で働くより、収入はいいわ。でも楽をしたい人なら、工場勤めの方が良いのでは」とシライネさんは今後、独立企業を考えている仲間に忠告する。

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