ホーム | 日系社会ニュース | 一世に多い、前立腺・乳ガン=日伯米の研究者らが講演

一世に多い、前立腺・乳ガン=日伯米の研究者らが講演

5月8日(土)

 ブラジル・日本研究者協会(SBPN、清水民夫会長)は五日午後、サンパウロ市のマツバラホテルで「ガンと日系人」など医療や健康をテーマに講演会を開いた。日本、ブラジル、アメリカの研究者のほか、田中オズワルドサンパウロ州保健長官、続木正剛元保健大臣ら要人が出席した。
 始めに、国立がんセンターの津金昌一郎予防研究部長が『サンパウロ州在住日本人、日系人及び日本人が罹るガンの傾向』について講演。今研究がサンタ・クルース病院と日伯友好病院のSBPN会員である日系医師らの協力を得て実現したことを明かした。
 津金氏は「二十五年前から、南米の移住者を対象に調査をしているがSBPNやJICAなどが支援してくれるので、調査がしやすい」とした上で、「サンパウロ州在住の一世男性は日本の日本人と比較して、たばこや酒の摂取が少ないためアルコール性肝臓ガンや肺ガンにはなりにくい。だが、肉や脂肪摂取が比較的多いせいで前立線ガン患者の数は日本人の二倍近いというデータがある。女性一世は男性同様、肺ガンと肝臓ガンは少ないが、乳ガンと皮膚ガン患者が日本人に較べ目立つ」などと語った。
 続く、ハワイ大学のロイク・レ・マーシャンド教授はハワイのガン研究所で、多民族で構成されているハワイ住民を対象に研究している。教授は『日本人一世、ハワイ人と日本人のガン』について報告した。
 「日本人と比較して一世は肉をよく食べるので、肥満体型になっており、大腸ガンが多い。喫煙好きな原住ハワイ人は一世の二倍以上、肺ガンを患う。最も少ないのは中国人一世だ」と説明した。
 JICAの佐々木氏のテーマは『ラテンアメリカとポルトガル語圏アフリカ諸国への協力』だった。
 「南米とポ語圏アフリカ諸国から三百五十人が日本で研修しており、帰国後に研修で得た知識や技術などを広めている。また、日本から保健関係のボランティア八十五人がブラジルで活動。ブラジルで採用した専門家も南米諸国で活躍している」と語った。
 ヤクルトの水口博之専務取締役は、ヤクルトの歴史と効用について話した。
 「健康長寿は言い換えれば、健腸長寿。いつも消化器官を健康に保つことが大切。たばこ、酒、脂肪分の多い食べ物を避け、黄緑野菜を多く摂取し、適度の運動をすれば、健康で長生きできる」とアドバイス。
 最後はカンピーナス大学の山中アデマール教授。
 「八五年にJICAから大学に一万ドルの内視鏡が贈られた際、日本語が話せるのでコーデネイターとして、橋渡し役をした」「その後十八年間で、超音波装置、レントゲン装置や内視鏡などの購入費計一千三百万ドルをJICAから寄与してもらった。大学では南米やポ語圏アフリカ諸国から研修医を受け入れ指導しているが、研修生の滞在費もJICAが受け持ってくれている」などと語り、日本政府の国際協力を高く評価した。

image_print