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コラム 樹海

  江戸の庶民から「首斬り浅右衛門」と呼ばれ恐れられた人物がいる。朝右衛門とも書く。本来は徳川将軍家の「様斬(ためしぎり)」を務めたのだが、明治になるまで七代続くうちに裁判で死刑の言い渡しがあった囚人の首を刎(はね)ることが多かった。七代目の山田浅右衛門吉利は幕末の人であり吉田松陰らの志士を斬首している▼明治十四年になると斬首刑は廃止されるが、新撰組隊長の近藤勇を始めこの惨たらしい処刑で世を去った人は多い。フランス革命のギロチンを持ち出すまでもなく白人社会にもかってはあったが、今も人の首を刃物で斬り捨てるのは恐らく―アラブの人だけであろう。イラクの反米武装派が「報復」の名を借りてアメリカの民間人を全裸にしたうえでナイフで首を斬り落としたのニュースに世界はびっくり仰天し米国民は怒った▼しかも―「テロリストは首に五回切りつけ、被害者のバーグ氏の頭が完全に垂れた後、さらに二回、切った」という具体的な映像をイスラム過激派のビデオが撮影していたの事実がわかれば米国民ならずとも怒りは爆発する。米大統領は「このビデオは自由の敵の真の実態を明らかにした」と言明。民主党の大統領候補・ケリー上議は「激しい怒りを感じる」の声明を発表したし上院や下院の動きも同じような忿懣が噴き出した▼米兵のイラク人虐待は許せないし非難も受け入れざるをえない。が、殺害されたバーグ氏に「虐待の責任」はない。それでも無実の市民の首を斬るのは蛮行というしかないではないか。   (遯)

 04/05/15

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