ホーム | コラム | オーリャ! | コラム オーリャ!

コラム オーリャ!


コラム 

  秋めいてきた。季節の風に思い立ち、小津安二郎監督の「秋刀魚の味」を借りてみた。小津作品は「秋」を抜きに語れない。「麦秋」に「秋日和」。その「秋刀魚…」は遺作であった。
 酒を飲む場面が頻繁に出てくる。サンマのないフランスでは「酒の味」と改題された。人生の円熟期にある男たちの寂量感を描く。油の乗ったサンマを齧ったときの苦味にも似た味わいを持つ。
 昨年十月、吉田喜重監督が自著「小津安二郎の反映画」の出版会のため、夫人で女優の岡田茉莉子さんと来聖。ブラジルにも熱狂的小津ファンがいると感心していた。
 「もののあわれ」と「サウダーデ」の類似性を看破した人類学者レヴィ・ストロースの指摘を思い出す。数年の滞在で「サウダーデ」の感覚もいくらか身についた今、小津の「秋」がいっそう身に染みる。(大)

04/5/18

image_print