ホーム | 日系社会ニュース | 福山市に土産物店=ブラジル帰国者夫妻が開く

福山市に土産物店=ブラジル帰国者夫妻が開く

6月5日(土)

 【中国新聞】ブラジル帰国者の夫妻が二十八日、福山市鞆町に残る江戸後期の二階建て民家を活用した土産物店を開いた。吉川博信さん(54)と兼子さん(52)。七年前から暮らす鞆を「安住の地にしたい」との思いから、手作業で店舗兼自宅に改装し、新たなスタートを切った。
 一階の店舗では、地元産のタイやサヨリのつくだ煮、尾道産のタコの干物などの海産物を販売する。はし置きなどの陶器や、草木染のスカーフなど知り合いのアマチュア作家の作品もそろえた。軽食コーナーの開設も準備している。
 土間を生かした店は、昭和初期の棚を置くなどレトロな雰囲気。屋号の「田渕屋」は、岡山県美作町の兼子さんの実家が一九五〇年ごろまで営んだ旅館名にちなんだ。
 福山市草戸町出身の博信さんは七四年春、牧場経営を目指してブラジルに渡った。日系人の牧場で働いたり、レモン農場を営んだりしたが、体調を崩した兼子さんの治療のため九一年に帰国。広島市南区や草戸町を経て、九七年冬から鞆の市営住宅で暮らしていた。 「伝統的な建物を大切にし、人情にあふれる鞆が好きになった」(博信さん)と民家を借りたのが二〇〇三年末。傷んだ柱や床などを改修し、水道管も取り付けた。
 「観光客が安らげる場所にしたい。町並み保存にも一役買えれば」と博信さん。兼子さんは「近所の人たちにも気軽に立ち寄ってもらえるよう、鞆に溶け込みたい」と話している。

image_print