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文化摩擦解消に一役=公営住宅で意識調査=外国人と日本人の共生探る=静岡(上)

7月9日(金)

  デカセギと日本人地域住民間の生活上の諸問題に対する認識の違いを浮き彫りにすることで、多文化共生社会への具体的筋道をより明らかにする。そんな興味深い調査が、静岡文化芸術大学の調査団(池上重弘研究代表者)によって行われた。日本人より外国人の方が近所付き合いに積極的であり、そのような外国人との交流に積極的な日本人住民が共にコミュニティ活動できる枠組み、仕組みが重要であると提言する。この調査は実際に、調査地の自治会が〃文化摩擦〃解消にむけて動き出す一つの契機ともなったという。(深沢正雪記者)

 愛知県豊田市の保見団地をはじめ、デカセギたちは安い家賃を求めて公営住宅へ殺到する傾向があり、そこの日本人住民と軋轢が生じていることは、日本のマスコミがたびたび報じていることだ。
 この調査は『多文化化する公営住宅における居住者の意識―焼津市・T団地での調査から』(二〇〇四年三月)で、静岡文化芸術大学文化政策学部の池上重弘助教授(文化人類学)を研究代表者に計六人が分担して行ったもの。
 静岡県焼津市にある県営住宅のT団地に住む、外国人を含めた二十歳以上の男女全員に対し、二〇〇二年にアンケートを実施した。この団地は管理戸数四百六戸のうち36・7%は外国人世帯で、県内の県営住宅では第四位の外国人密度を誇る。
 日本人居住者は四百三十人中、二百七十六部の回答(64・2%)、外国人居住者は二百六十六人中、二百四部の回答(76・7%)を得た。外国人からの回答率の方が高かった。
 この調査の特色は、日本人とデカセギ外国人双方に同じアンケートを実施し、いくつかの項目で両者の回答を対比させて論じている点だ。
 ここでも、地域住民との摩擦が生まれている。「外国人が夜たむろしていると、怖くて横を通れない」「外国人はうるさくて、ゴミ捨てのマナーも悪い」「外国人を入居させないで欲しい」など、報告書には増加する外国人に対する不満が記されている。

■問題起すのは外国人?■
 生活上の諸問題について、誰に責任があるかという認識について、日本人と外国人の間で意識のズレが生じている。
 調査によれば、外国人との交流に消極的な日本人は、生活上の諸問題を「外国人の問題」と認識する人が多い。それに対し、外国人との交流に積極的な人は、けっして外国人だけの問題ではなく、ある程度は日本人にも共通するものだと考えている。
 さらに外国人からすれば、「外国人だけが問題を起している」という認識はごく少数派であり、問題があるとすれば日本人にも共通している、という回答が多かった。
 このように外国人と日本人の回答とは対照的な認識を示す。
 報告書は、「このような現象はおそらく、外国人の一部に存在するであろう生活ルールの理解の不十分さと、マジョリティである日本人側がややもすれば『外国人』を一括りにして見てしまう傾向があることが重なって生じていると思われる」と分析する。
 さらに「すべての外国人が問題を起しているのではない以上、『外国人の意識が低い』といった議論は危険であり、団地というコミュニティ全体の問題として位置づける視点が必要であろう」と論ずる。
(つづく)

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