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静岡=文化摩擦解消に一役=公営住宅で意識調査=「移住」の深層にも迫る=連載・下

7月14日(水)

 ■日本語能力と意識■
 外国人の主な生活上の心配事・悩みとしては「ホームシックを感じる」「母国に残してきた家族や親せきのことが心配である」が四割以上の人に挙げられており、「母国の治安や経済状態」がそれに続く。さらに「言葉が通じない」「日本人の考え方がわからない」「生活上の差別や偏見がある」がそれぞれ二割前後の人に選択されている。
 日本語能力が低い外国人ほど「差別・偏見」を選択する傾向があり、心配事・悩みの選択個数が多い。
 また、来日の理由として、経済的な側面(母国の経済状態の悪さ、貯蓄、仕事)を選ぶ人には、日本語能力の低い人が際立って多く、「日本語能力の低い人は、就労・収入の面に日本滞在の主な理由を見出していることがわかる」とする。
 このことは日系人だから「日本で生活しやすい」素地をもっている訳ではないことを意味しており、「本調査の対象者のような外国人の日本での適応を難しくしている大きな要因の一つになっていると推測される」とし、日本語能力の低い日系人と非日系外国人との間にある、曖昧な境界線を示唆する。
 その一方で、長期滞日希望のある外国人は全体の四割強、中高年層だけなら五割に上っており、高い定住志向を表している。
 加えて、「日本人意識が高い人では外国人(同国人)意識も高い人が多いという結果は、来日する日系人におけるアイデンティティの二重性を強く示唆するものであり、異文化適応という観点から興味深い」との考察が記されている。

■盛んな近所付き合い■
 今回の調査から浮きぼりになったのは、外国人の方が近隣での付き合いは対同国人でも対日本人でも積極的である点だ。
 外国人は「少し付き合いをしてみたい」との回答が約半数、「もっと積極的に関わりたい」が四分の一を占めており、交流に前向きな人が明らかに多い。
 特に日本語能力が高い人、若年層で子どものいる人は、より一層日本人とかかわろうとする希望を持っている。
 同報告書には「(外国人の動向からは)自分たち同士のかかわりを大事にしつつ、ホスト社会にも目を向け適応していこうとする外国人居住者の志向性を感じ取ることができる」と前向きな評価を下す。
 一方、日本人は外国人と「必要最小限」のつきあいを望む人が半数を超え、「まったく関わりたくない」が二割を上回り、交流に消極的・拒絶的な人が過半数を占める。日本人に関しては、外国人との交流に消極的な人は、日本人同士の交流にも消極的な点が報告されている。
 「外国人では団地内の同国人同士の結びつきがかなり強いのに対し、日本人では濃密なつきあいに乏しいことがわかる」と書かれており、デカセギ問題に留まらない、現代日本社会のあり方に迫る考察を展開する。
 第七章ではさらに一歩考察を進め、「地域コミュニティ一般に対する問題解決の取組みが、外国人居住者の問題にもある程度援用できる可能性を意味しているのかもしれない」と示唆。
 日本で定住や永住を志向している外国人には、「積極的にホスト社会と交流を深めようと考える者がいると考えられる。このような人々と日本人のなかにいる交流志向の人々とをつなぐための仕組み作りが喫緊の課題であろう」と結んでいる。
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 ひるがえってブラジルの移民史を考えれば、一般論としては、現在のデカセギと似た状況があったとはいえないだろうか。言葉も分からず立場の弱い日本人移民は常に多数民族であるブラジル人から有益な情報を得ようと彼ら以上に交流を望んできたし、ブラジル人は『日本人はみな同じような顔をしてる』と一括りにする傾向があったことは否めない。
 単なるデカセギの研究という以上に、移住という行為の深層に迫る調査として興味深い。

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