ホーム | 日系社会ニュース | 高まるアパート需要=リベルダーデ=建設ラッシュ続く=予備校・大学の学生見込み=購入者は日系人が大半

高まるアパート需要=リベルダーデ=建設ラッシュ続く=予備校・大学の学生見込み=購入者は日系人が大半

7月22日(木)

  リベルダーデ区が空前のアパート建設ラッシュに沸いている。少なくとも七棟、六百六十八軒のアパートが現在建設中だ。区内にある大学や予備校に通う学生用の賃貸アパート需要が根強い。その大半が日系人によりすでに購入されており、中には一人で四軒、五軒購入して賃貸する投資目的の人も。デカセギの留守家族により、日本から送られてくる資金の投資先にも使われている。建設ラッシュの背景と流れを追ってみた。

  【端緒】
 二〇〇〇年七月に売り始めたグロリア街の「あさがお」は、実に十年ぶりの新築アパート物件だった。それまでは不動産業界では、東洋人街は需要がないと思われていた。ところが、「あさがお」の百六軒は開始から二年で完売。うち百五軒は日系人が購入した。
 最低価格だった一階住宅は建築前は四万八千レアルで売り出されたが、建築後には七万五千レアルで転売されるほどの人気だった。
 「あさがお」はプラッサ・アラメダ・ジュニオールにある弁護士国家試験予備校ダマジオの学生向けに、大空不動産(当時、古賀不動産)が企画した物件で、全て一寝室の設計。百六軒中七十軒を同学生用に、残りを一般向けに賃貸し、五%程度を日系人本人が住居として使う。一軒の有効面積が四十七平米と狭いので、二軒買ってつなげて使っている人もいる。
  【グロリア街】
 この成功に気をよくした大空不動産は、やはりグロリア街にある約十八年前に建築途中のまま放棄されていた物件の地権整理を三年がかりで進め、今年五月から「すずらん」として建築を開始した。また一階部分しか工事されていないが、来年一杯には引き渡しされる。
 「建築前からほとんど予約済み」と同不動産の山田仁司責任者は喜びの声をあげる。事実上、まったく宣伝をしないうちに一寝室四十軒(平均十万五千レアル)、三寝室二十軒(平均二十万レアル)がほぼ埋まってしまった。一部を岡田・古賀不動産で予約受付け中だ。
 【サンジョアキン街】
 ファグンデス街がガルボン・ブエノ街にぶつかる角の壁からは、アパート建設現場がのぞける。「ジャルジンス・ダ・リベルダーデ」という四棟立てのコンドミニオで、合計三百二十軒が〇六年十月までに完成し、引き渡される予定だ。
 全て約八十平米の三寝室で、平均価格は十七万八千万レアル。アパート購入者にも共同責任が生じるコーペラチーヴァ方式で建設している点が特徴だ。
 同敷地にあるショールーム担当者のヴァウミール・ネグロンさんは、「建設が開始されている第一棟は、十二軒以外はすでに販売済み。販売中の第二棟も八五%が売約済みです」と説明。二カ月後ぐらいから、第三棟の販売も開始する。
 「九五%は日系人が購入している。デカセギ帰りの人、親戚が日本で働いている人などが買っている。中には十六年間日本に住んでいるブラジル人企業家も」と語る。
 近隣にある銀座フラットなどを傘下におく中国系企業チャレンジャーが約六千二百平米の地権を整理し、その土地と引き換えに建設されたアパート数十軒を受取ることになっているという。
 【コ・フルタード街】
 コンセリェイロ・フルタード街868番でも巨大なアパート「Liberty Boulevard」の建設が進められている。一棟当たり百四十四軒が入り、それが二棟建設される。うち七十八軒分で、大空不動産などが販売に関わる。一寝室=四十二平米(平均八万七千レアル)、二寝室=五十五平米(平均十万二千平米)だ。
 【需要】
 全てに共通しているのは、学生の需要を見込んでいることだ。プラス日系人自身の住み替え需要があるようだ。大空不動産のアドバイザー小林優子さんによれば、「FMU、ウニノーヴィなどの学生の大半は、サンパウロ市在住者なのでアパートは借りません。やはり地方出身者が入るダマジオ、アングロなどの需要が多いようです」と分析する。
 逆に商業目的の賃貸事務所や商店スペースは、需要が少なく値崩れしている状態だという。「一時期はデカセギ派遣業者がたくさん事務所を借りてくれましたが、現在ではその多くが廃業してしまいました」と山田さんはいう。
 東洋人街のアパート建築ラッシュは、まだしばらく続きそうだ。

image_print