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百姓を営むことの誇り=今回は無条件〃幸福〃

10月23日(土)

 「ブラジルのこの一点は吾が土地よ稔り豊かな稲を刈り居り」――。第一回海外日系文芸祭・短歌部門で新聞放送協会賞を受賞した瀬尾天村さん(91、本名・清吉、鳥取県出身)は一九三三年来伯。六五年から俳句を始め、九二年を契機に短歌にも本格的に取り組むようになった。今回の受賞作品では、初めて自分の土地を手に入れた満足感を歌にした。
 「俳句や短歌は言葉の遊びではなく、心や人格の表れ」。瀬尾さんにとって俳句や短歌は自らの人生観を写しだすもの。だからこそ誰にも真似できない歌ができるのだという。
 一九三三年、二十歳で来伯した瀬尾さんはモジアナでの義務農年を終え、二十七歳まで日本語教師を勤める。その後、ポンペイアで百姓を始め、三十歳のときに八アルケールの土地を購入した。
 「ブラジルの、というより地球上の一点の主になったという気持ちは未だに抜けない」。誰からも支配されない土地で百姓を営むことを誇りに思う気持ち、やっと独立を果たした満足感が、選者にもうまく伝わったのだろう。
 一九六五年に俳句を始めた瀬尾さんは、「イッペ吟社」の代表を務め、俳句集『イッぺ』を二十八年間毎月発行している。日本の大会を中心に多数の大会に参加し、入賞。九二年末までにブラジル国内の大会で獲得したトロフィーは百十八個に及ぶ。
 短歌は一九九二年から大会に参加するようになった。「短歌の方が思いついたことを表現しやすい」と話す瀬尾さんは、短歌を始めてから受賞しやすくなったそう。自らの歌を「自分の心をこめた歌。特にいいものじゃないが捨てられない。だから総合点では自然と上位に入るんです」と分析する。
 今回の受賞に関しては「参加することに意義がある。無欲な気持ちで臨み、思いがけない賞をいただいてこれほど恵まれた気持ちはない。無条件〃幸福〃です」と話した。
 卒寿を迎えた昨年から「命ある限りさらなる精進を」と気持ちを新たに歌づくりに励んでいる。

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