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文協=盛りだくさん50周年事業=記念講堂に空調設備を=9小委員会で検討実施へ=「日本文化の影響」展も

12月7日(火)

 来年十二月に五十周年を迎えるブラジル日本文化協会(上原幸啓会長)は三日午後、同会議室で会見を開き、記念事業の概要について説明した。式典や五十周年記念誌や記念映像、記念講堂にエアコン設備を付けるなどの改修工事、特別展の開催など盛りだくさんの内容。ここしばらくは百周年祭典協会の影に隠れて存在感が薄かったが、これを機に足固めを図り、次の五十年間を展望する野心的な記念行事となることが期待されている。

 上原会長を委員長とする文協五十周年記念委員会の実質的な旗振り役である、松尾治総合コーディネータは「百周年記念祭の前夜祭になるのではと思っている」と位置付ける。
 六月に生存する創立会員を呼んで懇談会をしたところから始まり、半年間の準備期間を経てようやくヴェールを脱いだ格好だ。
 今回発表されたのは次の九つの小委員会。
 【1】顕彰・式典小委員会=来年の創立記念日十二月十七日に記念式典を行う。同時に文協創立の立役者である故・山本喜誉司初代会長の家族、創立会員、特に貢献のあった職員や会員などへの顕彰方法を検討。
 【2】施設改修小委員会=記念講堂にエアコンを付け、貴賓室の改修、日系美術館を手前持ってくるために会議室を奥へ移すなど。
 【3】広報小委員会=プロのデザイナーにロゴマーク案を依頼中で近日中に選考発表される。その他、横断幕、バナー、ペナント。記念メダル、美術作品を使った記念葉書、五十周年に関わる広報活動一般。
 【4】記録小委員会▼第一班=五十周年記念誌編纂、『移民の生活の歴史』(半田知雄著)の再編集と出版、日系女性に関する本の編纂▼第二班=文協の活動紹介するTV番組用の製作、文協の歴史のDVD(映像化)、古参移住者などの証言を映像などで記録する。
 【5】「日本文化の影響」展=日本文化がブラジル社会に及ぼした影響を絵や建築、写真などによって表現する展覧会を実施。日本館やブラジルの美術館での開催も予定する。
 【6】文化イベント小委員会▼討論会、フォーラム、セミナー=「若者の夢」「日系女性」「ブラジル社会への貢献」などをテーマに行う▼日本映画上映会=国際交流基金などの協力により、かつて日系映画館で上映して話題となった作品などを記念講堂で再上映する▼子ども向け=おもちゃ週間、音楽フェスティバル▼若者向け=アニメや漫画に関する共同イベントを模索▼図書館の情報化=図書館の蔵書リストをパソコンに取り込んで事務所と連動させ、他の図書館との情報交換を進める。
 【7】芸能小委員会=能の公演など、日本文化に関するイベントの開催。
 【8】慈善活動小委員会=関連イベント開催時に、食料品を集めて福祉団体に寄付するなどの慈善事業を行う。
 【9】資金調達小委員会=文協本会計とは別に資金を集めて運用する。現在、各小委員会から予算案を集計中。年初から本格的な寄付金集めを始める。
 最後に、松尾総合コーディネータは「集まった資金で実現可能な事業はどれか、という優先順位を今後検討する」と説明した。十一日の評議員会で、この五十周年事業案は予算付きで提案され、承認されしだい正式なものとなる。

文協の信頼回復を
東洋人街に足場固め

■記者の目■
 戦時中に敵性国民として迫害され、戦後は勝ち負け紛争によって内部から分断された日系社会――。その再出発は、サンパウロ市四百周年から文協創立へと続く一連の動きの中で行われた。
 その経緯からすれば、今回の五十周年事業は、文協の今後五十年を模索する事業どころか、本来なら日系社会全体のこれからの半世紀を展望する事業が行われてもおかしくない。ところが四年後に百周年が控えるため、今までどこか霞んでしまいがちだった。
 会見時に記者団から「日伯総合センターに文協が移転するとの話しがあるが、その場合、文協ビルはどうなるのか」との質問がでた。
 さる進出企業が百二十万レアルの記念講堂改修費用を負担しても良いが、文協ビルを今後十年間は使い続けるという証しが欲しい、と言ってきているという。文協に対する信頼の問題ではないか。
 最近はまるで、新しい百周年協会が主体で文協が追随するだけのおまけ的存在、という主客転倒が目立っていた。文協移転という話題は、「軒を貸して母屋を取られる」という諺を彷彿とさせる。
 松尾治副会長は「この建物はコロニアの善意が寄せられ建てられた。おろそかな扱いはできない。それに文協がリベルダーデから離れたら、ますます東洋人街に日系人の存在感がなくなってしまう。簡単には移れない」とし、従来のあり方を変えない考えを表明した。
 しかし、上原会長は、「私もほぼ同じ考えだ。リベルダーデは日系コミュニティの根っこがあるところ」と断わりながらも、「でも、ここでは若者は寄りつかない。だから、こちらの活動はそのままに、今流行りのピニェイロスやモルンビーも近いあちらでは、もっと若者たちの活動を促進するようなことをしたい」と語り、分断化を進める意向を示した。
 現実的には移転する費用もない――との話もでた。松尾副会長が言う「文協五十周年を移住百周年の前夜祭に」という意味でも、ここで原点に帰り、文協自体が五十周年の諸事業を通して将来への足固めをすることは重要だろう。コロニアからの信頼を取り戻し、本来あるべき百周年へ仕切り直すための橋頭堡となってほしい。
 百周年を機に文協を移転解体するのか、それとも日本移民史が刻まれたこのリベルダーデに、より根を張った組織になっていくのか。それ自体、五十周年で広く、じっくり論議されても良い問題ではないだろうか。
   (深)

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