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在外原爆被爆者の訴訟=担当弁護士、状況説明に=今年前半には出揃うか=援護=司法の判断

2月23日(水)

 在ブラジル原爆被爆者訴訟の担当弁護士、足立修一氏が在外被爆者を取り巻く訴訟状況について説明するため、二十日に来伯した。滞在は二十五日ごろまで。在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)が二十二日に懇親会を開いた。高齢などで渡日が無理な被爆者が居住地で手当ての申請を求めた裁判は、長崎地裁で三件、広島地裁、大阪地裁でそれぞれ一件が係争中。そのうち、長崎での一件は原告が勝訴したが被告が控訴した。
 足立氏によると、渡日が前提になる理由について国は(1)法律の仕組み(2)海外の医療機関の信憑性──などを挙げている。一方で、被爆の事実が認められる人を対象に被爆者確認証を発行。本人が訪日した時、手帳取得が速やかにいくような制度を設けている。
 この確認証を所持すれば医療費助成も受給可能。足立弁護士は「限りなく手帳に近い証明書だ」と判断する。
 昨年十一月、同氏らが韓国在住の被爆者を代理。確認証を添えて、広島県庁に手帳の取得申請をしたところ、今年一月十三日に却下された。
 これに対して、四月中旬までに提訴する。勝機は十分にあると考え、「ブラジル在住の人にも十分理解いただいて、一緒に戦ってほしい」と呼びかけた。
 葬祭料も海外在住者に支給されず、広島地裁と大阪地裁で訴訟問題になっている。「今年の前半には、司法の判断が出揃うのではないだろうか」と見方を示した。
 国は昨年十月から、在外被爆者を対象に医療費助成をスタート。南米について、医療保険を援助することになり、申請書類が送られてきている。森田会長は「年に十三万円ほどでは、ちょっと不十分。それに、保険に加入していることが条件になっており、入っている人と入っていない人との差が拡大してしまいます」と述べ、善処を促していくつもり。
 韓国から強制連行されるなどして被爆した三菱元徴用工が、国と会社を相手取って起こした裁判で、今年一月、広島高裁で判決があった。その中で、裁判官は在外被爆者を援護から除外する元になってきた、旧厚生省の四〇二号通達自体の違法性を初めて認め、原告一人につき百二十万円の支払いを命じた。
 被告は最高裁に上告したが、在ブラジル原爆者も通達によって被害を受けたとして、損害賠償を求められる可能性も出てきたという。森田会長は「我々が長年訴え続けてきたことが、やっと分かってもらえた」と喜び、援護に弾みがつくことに期待を込めた。
 足立氏は滞在中に、リオデジャネイロの被爆者も訪問する予定。

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