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YKKブラジル3千万ドル投資=ソロカバ工場を最新式に=ジッパー生産ライン増設=明確な経営姿勢打出す

3月15日(火)

 YKK・ド・ブラジル社(石川清治社長)は十日、サンパウロ市本社で記者会見を行い、二〇〇八年までに三千万ドルを投資すると発表した。約三十年前に作られたソロカバ工場の設備を環境問題に配慮しながら最新式に更新し、さらに主力製品であるジッパーの開閉金具のスライダー生産ラインなどを増設する。同〇八年にはYKK創始者、故・吉田忠雄氏生誕百周年や本社七十五周年を迎えることもあり、より一層の積極的経営姿勢を明確にした。

 世界のジッパー売上げの半分をおさえるYKK。世界六十八カ国に百二十二支社を持つ同社は、グループ全体で三万六千五百人を雇用し、約六千億円を売り上げる。ジッパーやボタンなどを統括するファスニング、工作機械、建材(窓枠、扉など)の三事業を柱にしており、世界を六地域に分けて経営する。
 三本柱の一つ、ファスニング部門の世界売上げは二千三百億円で、〇八年には三千二百億円を目指している。売上げの八五%は海外で、残りが日本。それゆえ海外に重きをおき、英国、米国同様、ブラジルでも地元出身の日系二世、石川社長を本社執行役員に登用するなど、積極的に現地人材を重用する。
 この投資発表のために三度目、四年ぶりに来伯した本社のファスニング事業本部長、井上輝男取締役は「これだけ大きな会社の最高責任者に日系人がなったのは、日系企業では彼が初めてでは」と語った。
 ブラジル社の創業は一九七二年で、約一千人の従業員を抱え、昨年の総売上げは一億九千六百二十六万レアル、ジッパー市場では半分近いシェアを握っている。ブラジルを拠点にチリ、アルゼンチンにも支社網をもち、南米全体をにらむ。
 本社の井上取締役は「南米グループの売上げは、全体の中ではそれほどでもありませんが、収益体質が非常によく、シェアも高いことがグループ全体に好影響を与え、昨年のムーディーズの評価もAAAからAAに上がりました」と分析した。現在、格付け機関ムーディーズで、AAクラスの日本企業はわずか二十数社という。
 ジッパー部門でいえば、世界売上げ二千三百億円のうち北米、欧州、南アジア地区がそれぞれ三百~四百億円、急成長の東アジア(中国含む)が約五百億円、日本が約二百五十億円に比べると、南米は百億円いかない程度。金額だけでは図れない存在感が、南米にはある。
 石川社長は言う。「今回の投資により、世界の他五地域に負けない最新設備を備えた生産体制をとる」。具体的には、生産量増大や生産品目多様化を図るだけでなく、注文を受けてから五日間で納品できるようにするとした。資金は、ブラジル社の現有利益を再投資することで充てる。
 会見前日の九日には、ソロカバ工場敷地内で、同市市長らを迎え定礎式を行った。現在、年間三億本のジッパー生産量を〇八年には五億本(売上げで一億ドル)へ、二〇一〇年には七~八億本を目指す。

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