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稲刈り=弓場農場、子供や非日系人総出で=機械に頼らず手作業=勤労精神次代に伝えたい

3月30日(水)

 去る二十五日はキリストの受難の日で、暦の上では祭日だったが、前日まで降っていた雨があがり、早朝からすがすがしい陽光が大地を照らし始めた。弓場農場では休みを返上し、子供たち(小学高学年)を含めて、総出でモチ米の刈り取りが行われた。
 午前八時に始まった作業には、農場に滞在している二人の非日系青年も参加した。一人はリオデジャネイロ連邦大学大学院で文化人類学を専攻しているマルセラ・トーレス・レゼンデさん。博士論文を作成するために日本文化を選んだ。日本に行くのが最良だが、言葉の問題などがあるため、ブラジル国内での対象を探していたところ、弓場農場の存在を知ったという。
 このことを担当教授に話したら「すぐに行きなさい」と勧められたので、弓場に来た。来てまだ数日に過ぎないが、共同生活が大変気に入ったので、ひと月ぐらい滞在して論文を考えたい、という才女だ。
 もう一人は、リオ・グランデ・ド・スル州の工業都市、サン・レオポルド市から来たレアンドロ・ファイスタバー君、二十九歳だ。空手など日本武道にあこがれているという体格の良い若者。ミナス・ジェライス州の武道仲間が、月刊誌「Terra」十二月号に弓場農場についての特集記事が載っている(本紙・〇四年十二月二十四日号で紹介)ことを教えてくれたので、早速、来た、という。
 本人はドイツ、イタリア、インジオ、スペイン系の混血だと言っているが、ガウショの血を引いており、日本人に負けないほどの勤労青年だ。弓場農場では家庭的な雰囲気が気に入っている、と喜んでいる。これも外来者を引きつける弓場農場の魅力の一つなのであろう。
 初めて経験する稲刈りにマルセラさんが「大人も子供も一緒に作業する姿に感動した」。初めての「〃収穫〃がここでの私の成果ね」と言えば、「親が牛を飼っているので、牛と馬の扱いには慣れているが、畑での作業は初めてだよ。炎天下の作業なので、途中で疲れを感じたが、休まずに作業に精を出している子供たちに刺激されて、負けまいと最後まで頑張った。初めての共同作業を体験できて、本当に気持ちが良かった」とレアンドロ君。このような形での非日系青年の参加は初めてのようだ。
 収穫したモチ米はアリアンサで古くから栽培されている品種だ。第三アリアンサから種子を分けてもらい、〇四年十一月十八日に蒔いたもの。二月の穂孕み期に雨が降らなかったため、昨年より収量がやや低かったが、六十キロ入り袋で二十三俵も採れたので、正月用の餅に十分な量を確保することができた。
 稲藁は自家用の野菜畑で使うし、籾殻は堆肥に還元されるので、無駄は一切ない。「機械に頼らずに、このような全員参加の手作業にこだわるのは、(弓場の)伝統である勤労と共同精神を次世代に伝承するため。私たちも、先代たちから受け継いできた。特に、コメは日本人の文化の原点でもある。今回は非日系青年たちも参加した楽しい収穫作業となった」と語る農場代表の弓場常雄さん(二世)だ。
 午後四時に作業が終わるまで、一人の脱落者もなく頑張った若者たちの力強さが弓場の伝統を暗示していた。晴天と満月に恵まれ、収穫を喜ぶ初秋の一日だった。

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