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高等審議会「統一」を要請=上原、下本両氏「連立」も=谷氏「ありえない」と否定=文協会長選 三つ巴か

4月2日(土)

 文協会長選挙のシャッパが公示される六日まで一週間を切った現在、コロニアはいまだかつてない状況を迎えている。目立った動きを見せず余裕の構えともいえる現執行部の上原幸啓氏、シャッパの一部を公開し、県連会長、元サンパウロ州財務長長官だった池田昭博氏をも抱き込んだ下本八郎氏、五百人以上の新規会員を獲得した谷広海氏。そして、三氏に共同シャッパ作成を要請する高等審議会。この三つ巴状態のまま、選挙戦になだれ込むのか、それとも―。
 三十日に行われた高等審議会の会合には、植木茂彬、貞方賢彦、横田パウロ、野村丈吾、安田ファビオ、篠又幸市郎、大竹ルイ、山崎チヅカら各委員が参集。委員以外には上原幸啓文協会長、中島剛事務局長、大原毅評議員会長、下本八郎氏が出席した。
 午後七時から始められた会合は三時間半を超え、話し合われた内容は大きく二つ。今回の決議事項が直接の権限をもつことはないが、執行部や百周年事業になんらかの形で反映されると見られている。その意向は三氏にすでに伝えられている。
 百周年事業は、リベルダーデ地区を中心に行われるべきとの考えを示したことが一つ。五十年前の文協創立にも関わった安田ファビオ氏、センターのデザインを手掛けた大竹ルイ氏も含めた参加者全員の統一意見だったという。ある委員によれば「レオポルジーナ案は廃案の方向で話が進んだ」ようだ。
 もう一つは、日系社会が割れないように対立候補同士が話し合う必要性が確認された。つまり、選挙で対立意識を深めるよりも、全員で一つのシャッパを作ることが望ましいとの考えだ。
 同席していた上原、下本両氏は、「それができれば最高だが・・・」と返答している。
 三十一日には、谷氏のもとに植木氏からの電話でその意向が伝えられたが、「今回の選挙によって文協への関心が大きくなり、かつ民主的といえる。すでに五百人以上の賛同者がいる現在、時期的にも遅過ぎる」と谷氏は高等審議会の申し出を固辞。
 「新しい民法で会員の直接投票による選挙方式が取られているにも関わらず、(統一シャッパを作るといった)昔のスタイルを引きずるのはどうか」と疑問を投げかける。
 それこそコロニアの弊害だったではないか―、と困惑を隠さない谷氏もシャッパ作成には苦労しているようだ。確かに、三十六人もの無報酬で働く理事を集めるのは容易ではない。多くの二世の入閣を予定していた谷氏だが、現状況を睨んでか「中立を守りたい」と断られる場合が多く、図らずも一世中心のシャッパが提出されそうだという。
 谷氏の支援者は一世が中心だが、「自分も帰化しており、ブラジル人という意識があるので、個人的には一世、二世という感覚はないし、両世代の溝を深めたくない」と苦しい心中を語る。
 谷派と見られていた中沢県連会長は、下本派のシャッパに名を連ねた。本紙の取材では「谷派との合流を呼びかける役割を自認している」と話していたが、現時点では谷陣営との接触はないようだ。
 一方、上原氏は「(続投することになれば)副会長の数を増やしたい」と話しており、選挙に関して、現行の体制を維持するのか、との問いには明言を避けている。なお、三十一日には、百人以上の会員を獲得した小川彰夫氏(文協を考える会代表)が上原支持を表明している。
 文協事務局によれば、先月二十三日までの会員数は約二千四百人。四月一日現在で約三千二百人となっており(取材時集計中)、この一週間で八百人近くの新規入会の申請が行われたことになる。このうち五百は谷陣営からのものと見られている。
 かつて会員だったことがあり、未払い会費がある人に選挙権は発生しないため、この数字は減少する可能性もある。千人近いという幽霊会員のなかで、現在までに未払い分を払って選挙権を得たのは、百人に満たない。
 選挙までの一週間で現会員に投票を呼びかける必要が各陣営に求められるようだが、今までの流れから、下本、上原両氏連立の可能性も否定できない。
 三年後に控えた百周年事業に大きく影響すると思われる今回の文協選挙、シャッパ公示までコロニアは熱い一週間をおくりそうだ。

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