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エタノール=「日本の視野にない」=横国大教授 サンパウロ市で会見=燃料電池の時代到来

4月2日(土)

 ブラジル研究者として有名で、環境保全型地域開発などに詳しい横浜国立大学経済学部の山崎圭一教授(43)が外務省から派遣され、レシフェ、マナウス、サンパウロ市の三都市で講演し、三月三十日午前、サンパウロ市内ホテルで記者会見した。
 この派遣は、昨年九月の来伯時、小泉首相が発表した「日本と中南米 新パートナーシップ構想」(小泉ビジョン)の「交流=相互理解・人物交流の促進」の一環として行われた。
 日伯間の新しい関係構築のキーワードとして次の五点を挙げた。(1)現在議題に上りつつあるFTAをどう考えるか。(2)環境問題、環境に優しい社会を作るためにお互いにどうしたらいいか。(3)デカセギ子弟の教育問題の早期解決。(4)文化・学術関係の振興。(5)お互いの市場をもっと研究する。とくにブラジル側は外国市場の研究をするJETROのような機関をつくるべき、などの提言をした。
 なかでも環境問題に関連して、最近の大きな話題になっているエタノールを上げ、「日本がガソリンにエタノールを混ぜる可能性はゼロだと思います。あと十年もすれば燃料電池自動車が市場を席巻する。エタノールやバイオディーゼルは日本の視野に入っていない」と断言した。
 また、デカセギ子弟の教育問題について、日本の普通の学校ではバイリンガルサービスが不十分なため、ドロップアウトし、未就学になっている。日本人は九九%が高校に進学するが、日系人は五〇%しか行かない現実を厳しくとらえ、早急に対策をとるべきとの考えを述べた。
 FTA締結に関して「個人的には結んだ方がいいと思います」とした。ただし、外務省では現在、五つもの国との交渉を同時並行して進めており、人出がない状態。「日本の政治家の理解が不十分で、担当者を増やす合意がない」などの事情を説明した。
 山崎教授は今回、サスティナブル社会という観点から日伯新パートナーシップを講演した。サスティナブル社会とは「公害のない、住みやすくて美しく、文化的程度の高い生活のでる町」の意味で、産業と環境を調和させた地域開発に重点を置くという。

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