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「デカセギ」を「移民」と表記=米州開銀総会のセミナー報告=日本から中南米へ莫大な送金=04年、日本ODAの5・7倍に

4月21日(木)

 「中南米へ送金、年二千九百億円(二十六億六千五百万ドル)、日本ODAの五・七倍、米国に次ぎ世界二位、出稼ぎ移民から」――沖縄タイムスの記事の見出しである。IDB(米州開発銀行)の第四十六回総会が、さきごろ沖縄で開催され、公式セミナーで「デカセギ」が取り上げられた。地元紙の同紙が、セミナー報告を伝えたのである。「デカセギ」のことが「中南米移民」と表記されている。出稼ぎした人が移民にされたのである。
 従来の移民は、日本からの戦前移民について言えば、「錦衣帰国」を目指した出稼ぎであった。それが、移民先国に永住した。現在のデカセギは、当初、就労して稼ぐ、という目的で日本へ行ったが、母国が帰国しても仕事がない状態のため、日本定住の傾向が年毎に強まり、しかも送金をしている。こうした意味で「(日本への)移民」という表現・表記は、誤っていない。
 中南米から日本に移民した人たちはすでに、かつて日本から中南米に移住した人たちの数をはるかにしのいでいる。正確な数字はないが、限られた年月での送金額もしのいでいる。送金額が多いことを理解するために、比較されたのが日本の対中南米政府開発援助(ODA)総額だった。
 〇四年のデカセギたちの中南米諸国への送金額は二十六億六千五百万ドル、〇三年の同ODAは四億六千三百九十万ドルであり、五・七倍に達したという。日本は、米国に次ぐ第二位の中南向け個人送金大国である。
 IDBのエンリケ・イグレシアス総裁は「中南米諸国出身労働者の日本での経験と送金が、帰国後の起業や貯蓄の成功に結び付いている」と強調した。続いて「送金」を生かすための送金コストの低減を考えなければならない、と提言。
 「デカセギ」が帰国後、うまく起業できず、さらに出稼ぎを繰り返すことには言及されていない。
 稲嶺恵一沖縄県知事は「沖縄県は、中南米に移住した県系人を重要な財産として、ネットワークの拡大を図っている」と紹介した。
 セミナーで報告された、ほかの数値。ブラジルやペルー出身など日本で生活している中南米諸国の成人は四十三万五千人以上で、全体の五四%以上が五年以上の長期滞在者。このうちの七〇%の約三十万人が、日本へ定期送金している。送金の年間平均回数は十四・五回、一回の平均は六百ドル、一人当たり年間約八千七百ドル。
 日系三世でバネスパ銀行の迫田ツトム東京支店長は、ブラジルに限って報告した。これによれば、ブラジルからの「デカセギ」は〇三年には二十七万五千人。そのうちの就労者約二十一万人の所得総額は年間約五十億ドル。「所得の約六〇%を消費に回し、残った貯蓄のほとんどがブラジルに送金されている」とした。

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