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選管を相手取り訴訟=谷陣営=決選投票差し止めへ=文協会長選=法廷闘争に発展

4月28日(木)

 法的解釈を巡って文協選挙が裁判へ――。三十日決選投票で上原幸啓候補との一騎討ちが注目されていた谷広海候補が、第一回投票を有効とする訴訟を起こした。二十七日午前十時から開いた記者会見で明らかにした。前日の二十六日、サンパウロ州十三管区裁判所に、選挙管理委員会に対しての訴訟手続きを行い、受理された。谷事務所によれば、二十七日中に、文協事務局に決選投票を差し止める通告がなされるようだ。会長選挙が法廷の場で争われることとなった。
 二十六日にサンパウロ州裁判所に受理された訴訟内容は、文協の定款第二十一条第一項の「maioria votos dos presentes」という原文がmaioria simples dos votos」という文章に書き換えられており、「最多得票者が当選する」という本来の意味が、曲げられているというもの。つまり、「すでに第一回投票で最多得票の谷氏の当選は決定している」という主張だ。
 これに対し、選挙管理委員会のある委員は、「『maioria』は、『過半数』を意味する」と説明しているから、両者の言い分は真っ向から対立していることになる。
 シャッパ提出期限の翌日である四月七日に現理事会と評議員会の幹部が決定した追加細則には「entendido 50% mais 1(um)dos votos validos」と解釈を強調している。
 谷陣営の小山昭朗氏は、「フットボールに例えれば、試合開始後にルールを変更するようなもの」と揶揄する。
 現理事会が選挙細則決定に名を連ねていることに対し、谷氏は、「(選挙の一候補である)現執行部が入ってやること自体がおかしい」と続ける。
 「どうしても勝ちたい」との本音も漏らしつつ、「しかし、これじゃあ選挙はできない」とも。
 この解釈について、今回の訴訟担当弁護士に相談したところ、「『定款に従えば、(谷氏が)勝っている』との言葉を聞き、自信を持った」という。
 谷陣営によれば、訴訟判決が出るまで長くて二カ月と見ているようだが、「取り下げはいつでも出来る。それまでに上原陣営との話し合いを行いたい。今回の訴訟はそのための手段」との考えも示した。
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 下本氏からの条件を検討するため、二十五日夜、約二十人の谷陣営幹部が集まった。午後十一時まで続いた話し合いは、下本候補と手を結んでも勝ち目はないと判断したようだ。
 「三月三十一日に確認した新規会員の数が三日後には何故か増えていた」。
 谷氏と徳力啓三事務局長は、同日事務局が閉まる直前に新会員の登録を済ませた。最後の有権者会員番号を持っているはずが、それから二百人以上も新会員が入っている。
 それが分かったのは、事務局に申請して十日後に受け取った有権者名簿の番号からだった。
 「誰が入れたんでしょうなあ。つまり、僕らは有権者が何人いるかも知らずに選挙活動していたわけ。でも、向こう(現執行部)は知ってる。こんなバカな話がありますか」と谷氏は声を荒げ、第一回選挙での不公平さを挙げる。
 「現執行部と選挙管理委員会はくっついている」とまで言いきった。
 会見に出席した記者から、「百周年を三年後に控えた今、数カ月の空白期間を作るのはどうか」と今回の訴訟自体への疑問の声も聞こえたが、「コロニアの問題をコロニアで解決すべきとの考えもあったが、下本さんの票を入れても、この人達の下では、選挙はできないと判断した。選挙までもう三日しかないし、唯一の手段と思う。今回の仮処分期間で話し合いをするほかない」と苦渋の選択があったことを明らかにした。
 さらに谷氏は、「(上原候補の当選で)レオポルジーナ案が継続されることにより、(経営危機に陥り)文協がなくなってしまう危機感が大きい」とした。
 上原陣営との交渉が前日、決裂していた下本八郎氏から会見当日朝、連絡があり、「一緒に組めば、勝てる。決選投票に臨もう」との連絡もあったことを明かし、「そんなネゴシオで勝つ選挙は意味がない。それこそしこりを残すと思う」と話した。
 今回の裁判に、支持者たちはどう感じると思うかとの質問に、「ついてきてくれると思う。二世には戦後一世に対する偏見があることはみな経験で知っているし、(このような事態になったことは)理解してくれるはず」と表情を引き締めた。
 裁判という方法で会長となり、コロニアの協力を得ていけるのか、との問いに対しては、「文協は企業とは違うし、少しずつ積み上げてゆく。運営に必要なのは、決定し、責任を取るトップ。やるべきことは分かっているし、皆も協力してくれると思う」と述べるに留まった。

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