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谷陣営=「不公平な選挙に一石を」=訴訟継続の真意明かす

5月3日(火)

 谷氏は辞退を表明した四月二十九日午後の記者会意見で、上原会長を「パラベンス」と祝福し、選挙管理委員会の山内淳副委員長と握手を交わして「細かいことはもういい。過去の話は忘れて、日系社会のために一緒に働きましょう」と語った。
 しかし、二日時点で裁判を取り下げておらず、三日晩の同陣営会合で正式な方針を決めるという。
 片手で握手しながら、もう一方の手でナイフを握っているような印象を与えかねない今回の行動の真意はどこにあるのか――。弁護士のアドバイスで発言を控えざるをえない谷氏に代わって、同陣営幹部の声を拾った。
 二十九日の会見時、渡す予定だった辞退を告げる文章には、選挙管理委員会への批判や意見が書き連ねてあった。そのため、山内副委員長が受け取らず、谷陣営では辞退の意だけを書いた書面を作り直した。
 小山昭朗氏によれば、その文章を文協へ届けようとした時、弁護士から「裁判所からの対応が分るまで渡すのを待った方がいい」との連絡があった。そのため選挙管理委員会は二十九日夜九時まで待ったが辞退書は届けられず、結局、選挙は行われることになった。
 三十日午後一時過ぎ、谷広海候補と林ヨシオ・アレシャンドレ弁護士は文協に来て、決選投票辞退を伝える書面を渡した。この時、本紙記者は「裁判は続けるのですか」と問うと、谷氏は「勝手に発言しないよう弁護士に注意されているので、今は答えられない」とのみ語った。
 「こういうことですから」。谷氏はビラのような書面を渡し、足早に去った。「今までコロニアに良かれと思って発言してきたことが、選挙では裏目に出ている」。そう言い残した。文書には谷候補から支援者向けの、次のメッセージがしたためられていた。
 「四月十六日の文協会長選挙において、谷シャッパは八百四票を取り、第一位となりました。私どもはこの選挙結果で、当然勝利をおさめたものと確信しております。決選投票は、定款に決められているものではなく、私どもはこの選挙に参加しないことを決めました」。書面からは、裁判は継続する意志が読み取れる。
 五日二日午前十時、真意を問うために本紙から谷氏に電話し、午後一時から記者会見を開く件を確認した。
 その後、谷陣営代表を務める徳力啓三氏から会見中止を申し入れる電話が入った。「弁護士と相談し、中止になりました。明日(三日)の晩、シャッパの人たちに集まってもらい、相談することになっています。その上で、谷から発表があると思います」。
 「記者会見での谷氏の話と矛盾しているのでは」との問いに、「矛盾はないと思います。もちろん、内部的に『辞退したんだから、これ以上文句つけずに、いさぎよく腹を切ったらいい』という意見もあります。その一方、選挙管理委員会にも間違った点があったのだから、次回の選挙で同じ愚を繰り返さないように裁判を続けた方がいいという意見もあります。不公平な選挙に対して一石を投じる必要がある、というものです」と事情を説明する。
 同陣営の中には、「何も谷さんは会長になりたいから裁判を続けようとしている訳ではない。今回の選挙制度自体、上原さんたちが作ったもの。その不公平さを明らかにしないで、やられっぱなしでは将来のために良くない」と代弁する声もある。
 どうやら、現執行部が続投することを前提に、「意見を聞いてもらう手段」として裁判を選んだようだ。ある選挙参謀はいう。「いままで口頭や書面で何回か訴えてきたがダメだった。だが裁判であれば、向こうも本気で聞いてくれるのではと思った」。
 三日晩の会合の結果、裁判を続けることになった場合、「判決が出るまでに二~三年はかかる」と弁護士から言われている。
 この状態を、百年祭まで持ち越していいものだろうか。

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