5月11日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】開幕した南米アラブ首脳会議で亜国工業連盟のメンジグレン副会長は九日、ブラジルがメルコスルの結束強化に努めないなら、亜政府は同協定から脱退する旨通告した。亜代表団はメルコスル発足で合意した加盟国の協調体制を忘れ、ブラジルが隣国の権利を損なったと非難した。一方では経済交流を目的とした首脳会議が、共同声明文を巡って政治色の濃いものとなって混乱、会議場は議論のるつぼと化した。
南米アラブ首脳会議は予想に反し、穏やかならぬ会議となった。サンパウロ州工連(FIESP)に相当する亜国工業連盟(UIA)は、ルーラ大統領に対し最後通告とも取れる警告を発した。メルコスル擁護か亜国のメルコスル脱退か、二者択一を迫った。メルコスル擁護とは、ブラジル側輸出の自主規制だ。
亜国はメルコスルから脱退し、独自の方法で国際市場で輸出戦略を展開すると、UIA副会長が示唆した。ルーラ大統領の演説要旨には、伯亜間に生じている貿易不均衡に対処する意向が全くみられないとして、不満を爆発させた。亜代表団は、フルラン産業開発相とアモリン外相の出迎えを受けた。
亜代表団はレセプションでも、不快の表情を隠さなかった。外相が亜国の抗議を煙としたが、煙以上らしい。ビエルサ亜外相は「伯亜両国は同等の加盟国ではないか。ブラジルは、メルコスル市場を独占しようとしている。アスンシオン合意を忘れて、次は何を企んでいるのか」と述べた。
「剣を持たない聖人は無力」のごとく、ブラジルは成り振り構わず亜国への国際金融投資をさらったと思っているようだ。伯亜間の貿易均衡に向けた政治交渉はらちが開かぬとし、セーフガード(緊急輸入制限)方式やブラジルを標的とした為替操作で圧力を掛ける考えらしい。
一方、南米アラブ首脳会議は、共同声明書の草案を巡って番狂わせが生じた。両陣営の経済発展を目的とした当初の目論みは、アラブ外交の強引さに南米勢が踏みにじられた。問題となったのは、テロ非難に並んで外国軍に侵略された地域の武装蜂起を合法化する件だ。パレスチナの自爆テロやイラク駐留の米軍部隊に対抗する武装勢力のことを指しているとみられる。
会議出席の外相三十四人が、激しい議論を交わした。十、十一日も共同声明文を巡り白熱の議論が継続される。アモリン外相はテロと侵略への抵抗との相違を、ブラジルの考え方で説明した。それが国際的にどれだけ通用するかは全く分からない。
アラブ代表が要求する抵抗運動の合法化の条文について、南米代表は削除を要求した。会議の政治利用を避けるため、テロの定義は国連安全保障理事会での裁決一任が提案された。ブラジルはコロンビア革命軍をテロとみなさないため、パレスチナ自爆テロもイラク武装勢力も象徴的存在として捉えていると説明した。
アラブ側の見解と南米側の見解相違は判然としていることが、出席者全員に理解された。アモリン外相が、パレスチナ問題はフォークランド紛争と同列にすることで理解を得た。