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衛生管理=厳格指導へ=ブラジル日本料理協会=生鮭の寄生虫問題に対応=「信用回復目指したい」

5月12日(木)

 全国約二百五十軒の日本料理レストランが加盟するブラジル日本料理協会(ABCJ、カワウチ・ユーゴ会長)は十日、生鮭の適正調達方法や衛生管理についての指導内容などが盛り込まれた講習プログラム「コンプロミッソ・デ・クアリダーデ」を発表。仕入れ・在庫管理・調理準備・サービスの四段階で厳しい基準を設け、業界内に徹底したい意向を示した。生鮭の寄生虫問題を背景に、顧客離れが顕著な日本料理レストランの信用回復を目指す狙いがある。カワウチ会長は「協会が発足して十三年。プログラムの実現は夢だった。業界の落ち込みは深刻だが、レストランの質の向上に繋がれば」と語る。
 同協会によると、日本料理を専門に提供しているレストランはサンパウロ市内に三百軒。うち百一軒がすでにこのプログラムに賛同しており、今週中にもが店内に「受講」を示すシール貼られるという。サンパウロについで日本料理レストランが多いリオ、クリチーバ、ベロ・オリゾンテでも普及していく方針だ。
 講習は六~八ヵ月続き、消費者が懸念を深める鮭に関する指導が第一段階となる。マイナス三五度で十五時間、あるいはマイナス二〇度で七日間にわたって冷凍されていれば感染の恐れはないとされ、協会が定めた基準か、ブラジル当局のノルマを満たしている冷凍鮭の調達を徹底させる。
 そのほか、器具や素材の衛生に最大限気を配るよう促し、実際の調理からサービスの段階まで、食の安全を守るための細かい規則を設けている。義務を履行できていないことが確認された場合は、最終的に与えられる「衛生保証資格」の剥奪もありえるという。
 業界の抜本的改革に乗り出した協会だが、楽観ムードはない。生鮭の寄生虫感染が問題視された後、売上げが六割減少したレストランさえあるほど客足が遠のいた。近年飛ぶ鳥を落とす勢いだった業界だけに、その落ち込みは深刻に映る。
 徐々に顧客が戻ってきているとはいえ、この二カ月間にサンパウロ州内で鮭を食べたことが原因と見られる寄生虫感染者十四人が新たに発覚。これで昨年三月からの類似感染者は四十二人となり、サンパウロ州保健局は「生鮭の消費はまだ感染の危険がある、現状では衛生管理をコントロールできていない状況だ」と警戒を解いていない。
 これに対し、ジョゼ・フリシュ水産特別大臣は十日の会見で、「生鮭は安全だ」と呼びかけ、「チリ産の鮭が危険視されたのは国際的な陰謀だった」との見方を示している。

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