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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」

2005年7月16日(土)

 来たる二〇〇八年の移民百周年に向けて、リオ州移民百年史の編集を担当している関根と申します。仕事は他に、機関誌の編集、その他の諸業務、それと時間外の仕事として自分史の制作などに携わっています。
 私は仕事を通してリオ州内のいろいろな方にお逢いする機会が多いのですが、こちらの人は〃いい顔〃をした方が多いと感じています。容姿のことではありません。慈愛に富んだ人生を歩んでこなければ出せない人間の渋みとでも言いましょうか。その生き様が刻まれたが如き深い皺、来し方の艱難辛苦を感じさせない気の利いた冗談….。
 そういった意味で、私はリオ州日系移民史の編纂に携わることに、大きな喜びと確かな手応えを感じています。
 正直な話、〃移民〃について日本の現代人は、皆さまが思っている以上にあまりモノを知りません。学校の教科書にも記述は殆どありません。未だに暗く悲しいイメージさえあります。 私もブラジルに来るにあたって多少なりとも調べたのですが、限られたイメージしか抱けませんでした。
 しかし、実際に移住地へ赴き高齢の方々に話を伺うと、暗く悲しいイメージはありませんでした。逆に、苦労を辛いこととしてだけ受け止めていたのではなく、その苦労に対する創意工夫を楽しんで来られた方々が多いと感じています。そして週末毎に集まって諸活動に興じる姿は、老いてなお、とことん人生を楽しんでらっしゃるように見えます。
 日本では今、〃パワーシニア〃と銘打って、サーフィンやバンド結成などをする若者寄りの生活を送る高齢者が注目を浴びていますが、私にはこれは高齢者からお金を引き出すための、メディア主体による商売半分の打ち出しに見えてなりません。個人主義の悪い典型にも見えてしまいます。
 人のために協力を惜しまず、経験豊富な立場として若手にアドバイスを送り、自分は自分の好きな方法で余生を楽しむ。日系社会、そして〃いい顔〃の内には、現代日本が失ってしまった何かを感じずにはいられません。
 そんな有形無形のやさしさをくれる日系社会に対して、私が出来る恩返しは何か。それは仕事でしかないと考えています。つきましては自分の職種を活かしていろいろなことに関わっていきたいと考えています。 懐の深い日系社会のこと、アイデアは無限に広がっていきますし。そしてこれからもいろいろと皆様のお知恵を拝借することもあるかと思いますが、そのときはひとつよろしくお願いいたします。
  ◎     ◎
【職種】企画・編集・広報
【出身地】神奈川県横浜市
【年齢】31歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
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