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子弟4割が未就学/高齢化もそろそろ=デカセギ問題の現状深刻=サンパウロ市で講演会、今後を模索

2005年8月6日(土)

 サンタクルース日伯慈善協会(横田パウロ理事長)は七月三十日午前、サンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区にあるUNIFAI大学講堂で日本のデカセギ問題に関する講演会を行った。二百五十人以上が来場し、熱心に質疑応答が行われるなど感心の高さをうかがわせた。
 最初に、日本で六校(生徒数約千人)のブラジル人学校網を経営するコレジオ・ピタゴラスのメンデス・ペドロ・ネット校長が教育の現状を報告した。
 〇三年には、ブラジル教育省公認校は二十三校(生徒は二千三百六十二人)で、未公認校は二十八校(約二千四百人)だった。〇五年現在では公認校は三十五校(五千三百五十人)、未公認校は三十校(二千五百四十五人)に増加している。
 地域ごとに見ると、最も多いのは愛知県の公認八校、未公認三校。次いで静岡県の六校、三校。群馬県の五校、三校。岐阜県の三校、一校となっている。
 ブラジル人学校生徒は合計で八千人近くいるが、「約四万二千人の子どもたちが学齢期にあるのに、少なくとも四〇%が日伯どちらの学校に通っていない」と問題を提起した。
 さらにブラジル人公認校では、小学生が四一%、中学生が五四%で大半を占め、高校生がわずか五%しかいない点を指摘。「高校の年齢になると、みな働き始めてしまう。これが現実だ」と残念そうに語った。
 今後の課題として、教育の重要性を父兄に理解してもらうこと、学生割引の使用許可、体育館などの設備の充実、学校法人認可の手続きの簡素化、奨学金を増やすことなどを挙げた。
 同学校網開設に尽力した山中イジドロ農務大臣特別補佐官は、ロンドンでブラジル人青年がテロ犯と間違えて射殺された事件にも言及し、日本などの外国で働かざるを得ない原因は、国内の失業率の高さだと語った。
 さらに、マリオ・コーバスサンパウロ州知事時代の教育局長ローゼ・ナウバウエル氏は「日本のブラジル人の高齢化問題をそろそろ真剣に考えなくては」と指摘した。
 東京でブラジル人支援をするNPO団体「CB・SABJA」を運営する毛利よし子シスターが演壇に立ち、活動内容を報告した。
 先の新潟中越地震でも救援キャラバンを組織し、物質的な支援やカウンセリングなども行った。
 ブラジル人の不良青少年の増加が社会的な問題になっていた群馬県太田・大泉地区で、青少年向けの啓蒙イベントや文化活動を〇一年から進めており、著しい成果が上がっていることから地元警察から感謝されている点なども語った。
 また〇一年から電話相談も実施しており、労働問題や体調不良から書類まで、毎月平均百五十件も受け付けている。精神面や病気、衛生面への支援・啓蒙として医療キャラバンも実施している。
 「日伯双方の統合的な協力体制のあり方を今後模索しなくてはならない」との課題をあげた。
 その後、質疑応答が行われた。最後に横田理事長は自身もメンバーを務める日伯二十一世紀協議会の初会合が八月二十九、三十日にリオで行われる予定と語り、それに向けてコミュニティ、政府各レベルで議論を深めていく必要があると締め括った。

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