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犯罪の背景に薬物=仕事解雇され強盗=安易なデカセギ危険=関西地方で=県警の通訳=宮島さん警鐘鳴らす

2005年8月16日(火)

 現在、約二十七万人ともいわれるデカセギやその子弟が引き起こす犯罪が後を絶たない。年々その件数は増加傾向にあり、日本の社会問題ともなっている。「安易な気持ちでデカセギに行くのはどうか」と訴えるのは、関西地方を中心に通訳として活動を行う二世の宮島直美さん(30)。現場から見たデカセギ犯罪の現状を聞いた。
 関西地方の県警の通訳センターに登録し、翻訳の仕事の傍ら、三年前から警察の要請に応じ、ブラジル人容疑者の取り調べや現場検証に通訳として立ち会っている。
 担当するのは平均一カ月に一件で、最低十日から二十日間はかかる。強制送還を恐れる容疑者も多いこともあり、「他の国籍の容疑者より、時間がかかる場合もある」ようだ。
 容疑者のほとんどが三世の若年層で車両盗難が圧倒的。「犯罪に手を染める背景に薬物との関連」を強調する。日系ブラジル人に人気のあるディスコでは、覚醒剤などが売買されており、取り調べでの尿検査でほぼ全員から陽性反応が出るという。
 「ブラジルで薬物経験がある」ことや、薬物を買う金欲しさの動機からも「ブラジル人に対してすでに悪いイメージを持っている」と警察や裁判官の心証の悪さを挙げる。
 彼らは祖父母の国で罪を犯すことについて、良心の呵責を感じることはないよう。しかし、低年齢になるほど後悔の念にかられていることもあり、物心両面で手助けできないかと考えることもある。
 が、仕事上、個人的に関わることは禁止されている。「状況が分かっても直接手助けができない」と苦しい胸のうちを吐露する。
 斡旋業者の甘い宣伝文句をうのみにして訪日、仕事先に首を切られ、次の就職先が見つからず、犯罪に走るケースが大半。「どうにかなるといった考え方の人が非常に多い」とその傾向をみる。
 これまで担当した百人近い容疑者は日本語で自分の名前すら書けず、会話能力もほぼゼロに近かった。
 「厳しい警察の取り調べに耐え切れず、犯罪を認めてしまった」と告白したある男性もいた。三年の刑期をほぼ終え、強制送還前に担当した悲惨なケースを挙げ、「日本語が話せないがために、不当に拘留されている例もあり得るのでは」と推測する。
 ノイローゼで精神化医にかかる容疑者や、大阪府茨木市の入国管理局で何年も強制送還を待っている人もいるという。
 「こういう存在すら忘れられたような人になんとか救いの手を差し伸べられないか」と考えている。「辛いこともあるが、やりがいのある」通訳の仕事にこれからも取り組む考えだ。
 「誰にでも起こり得ること。明日は我が身と思ってほしい」と、安易にデカセギに行くことに警鐘を鳴らしている。

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