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地域社会への影響/帰国後の社会適応など=日伯両国でデカセギ調査へ=今後4年、研究者12人が参加

2005年8月19日(金)

 日本で新たなデカセギ調査プロジェクトが始まっている。外国人の増加が地域社会にどのような変化をもたらしているのかを調査するもので、日本学術振興会の科学研究費補助を受け、今後四年間、日本とブラジルの両国で進められる。ブラジルでは、デカセギ帰国者のブラジル社会への適応を調査するため、体験者への聞き取りやアンケートを実施する。このほど、北海道大学大学院の小内透教授を代表とする調査団が来伯した。
 今回来伯した調査団は、小内教授をはじめ、愛知学泉大学の都築くるみ教授、札幌国際大学の飯田俊郎助教授、品川ひろみ講師、武蔵大学講師でジャーナリストのアンジェロ・イシさんの五人。プロジェクト全体では十二人の研究者が携わっている。
 約三十万人といわれる在日ブラジル人社会。定住化傾向が進む一方で、繰り返し訪日する人、ブラジルに戻った人と、デカセギの形は様々だ。子供たちも、帰国後、教育やアイデンティティの問題を抱えている。
 これらの帰国者がどのように社会に適応していくのか、そこにはどのような問題があるのかを調べることが、ブラジルでの調査の目的だ。大人だけでなく、子供も対象に各地で聞き取り調査やアンケートを実施していく。あわせて、二十億ドルとも言われるデカセギの本国送金がブラジル社会に与える影響についても調査する方針だ。
 小内教授は「在日外国人の生活は日本だけでは完結しません。視野をブラジルまで広げて、国家間にまたがる生活を調べることが必要」とブラジルでの調査の重要性を強調する。
 地域社会学、教育社会学が専門の小内教授は、これまでにも在日ブラジル人をめぐる社会・教育問題に取り組んできた。
 小内教授は群馬県太田市の出身。「地元に帰るたびに街の様子が変わっている」ことがこの研究に関わるきっかけだった。
 これまで群馬県太田市と大泉町を中心に、在日ブラジル人の労働・生活・教育・行政などにおけるブラジル人と日本人の関係について調査を行ってきた。
 今回のプロジェクトでは、これら二カ所に加え、愛知県豊田市ならびに豊橋市、静岡県浜松市などのブラジル人集住地域でも調査を実施するという。
 愛知県から来た都築教授は、ブラジル人の多く住む豊田市の保見団地で在日ブラジル人の諸問題に関わってきた。飯田助教授は十年前に一度、帰国者の調査を行うため来伯している。「この十年でどう変わったか見てみたい」と飯田さん。幼児教育が専門の品川講師は今回の滞在中、日系の保育施設などを訪問する予定だという。
 一回目となる今回の来伯では、来年以降の調査の予定を立てていくため、関係団体や機関に聞き取りを行っている。二十三日までの滞在中、クリチーバやサンベルナルド・ド・カンポなどサンパウロ以外の場所も訪問する。
 「十二人のほとんどが、ブラジルのことをまだ良く分かりません」と語る小内教授。「皆の力を結集していいものにしたい」と抱負を語った。

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