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在外被爆者健康管理手当て申請=在外公館でもできる=年末から=「手帳」取得手続き難しい=まだ遠い要望の全面受け入れ

2005年9月2日(金)

 在外被爆者による健康管理手当ての申請が年末から、在外公館でも可能になる見通しになった。読売新聞社が、一日付けのオンラインで報じた。被爆行政が一歩前進したと、関係者は喜んでいる。ただ、政府筋の見方によると、申請の前提となる被爆者手帳の取得については、在外公館での手続きが難しいとみられており、在外被爆者の要望が全面的に受け入れられたわけではなさそうだ。
 記事によると、政府は被爆者援護法施行規則を改正し、年末をメドに在外公館で受け付けを始めたい考え。被爆者健康手帳を持つ在外被爆者は外務省の調べで、今年八月現在、韓国や米国、ブラジルを中心に約千三百人に上るという。
 政府は〇三年三月から、来日による申請を条件として、在外被爆者にも手当の給付を認めるようにした。被爆者の高齢化が進み、訪日には費用もかかることから、居住地での申請が可能になるよう、手続きの改善を求める声が上がっていた。
 手当の申請には、現在も原爆症であることを証明する診断書の提出などが必要となる。政府は在外公館での申請が円滑に進むように、被爆者を診断する現地の医療機関を事前に指定することを検討している。
 一方、被爆者健康手帳を持たない在外被爆者は従来と同様、本人が訪日し、手帳を取得する必要がある。政府筋は「健康手帳の取得には、被爆地にいたことの証明が必要で、在外公館での手続きは難しい」と説明している。
 政府の態度が軟化したことについて、病気療養中の向井昭治在ブラジル原爆被爆者協会副会長(78、広島県出身)=サンベル・ナルド・ド・カンポ=は「望んでいたことが、一つ叶えられて喜ばしい」と、妻幸子さん(二世、75)に伝えた。
 サンタ・カタリーナ州の小川和己ラーモス移住地原爆被爆者と子孫の会代表(76、長崎県出身)は「そうですか、良かったですね。ここで子孫は五十人くらいに増え、悲惨な歴史を子供たちに伝えていきたいと思っているところです」と喜んだ。
 一方、手帳を取得していない被爆者は、行政による救済から取り残されることになる。「国の対応は一歩、一歩しか進まない。一番支援が必要な人が、後回しにされてしまう」との声も上がっている。

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