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救済会=高齢者と同居=介護者の精神的負担を和らげる=お互いの悩みを相談=専門家もアドバイス

2005年10月8日(土)

「姑が心配で外出できない」=「心ない言葉で愛情が失せた」
 一人で苦しまないで──。救済会(左近寿一会長)は毎月第一木曜日午後二時三十分から午後四時まで、文協ビル四階(サンパウロ市リベルダーデ区サンジョアキン街381番)の同会会議室で、高齢者介護にまつわる相談会を設置し、参加者の悩みを聞いている。体験を共有し心理士からアドバイスを受けることで、精神的な負担が和らいでいるようだ。
 「姑を一人家に残すと何が起こるか分からないので、外出ができないんです」。八十七歳の姑(一世)を介護しているという女性は、高ぶる気持ちを抑えながら切り出した。これまで自宅内の階段で何回も転倒しており、目が離せないからだ。
 夫が長男のため、三十年以上も同居して本人なりに尽くしてきたつもりだ。四年ほど前に傷つくような言葉をかけられて、愛情が一気に消え失せた。「とてもショックで、介護する意欲が無くなってしまいました。長男の嫁が親の面倒をみるのは、義務だと思っているみたい」。
 姑は家を出て一人暮らしを始めたいと言っている。嫁に対する不満は夫の兄弟たちに広まり、皮肉交じりに「親切にしなさい」と声をかけられるようになった。「段差をなくすように、主人に相談しても耳を貸してくれない」とやるせない。
 これに対して、心理士の中川クララさんは「高齢者は一般に介護する側が何度訴えても、態度を変えてくれない。だからこちらが、変わっていく必要がある。相手の言い分を全部受け入れると心身ともにもたない。どこまで手を貸すかについて、自分の中に規律を設け限度を示すことも求められるのでは」とアドバイスした。
 救済会は毎年上・下半期にそれぞれ一回、憩の園(グアルーリョス)で地域住民を対象に在宅介護の講習会を開いている。リベルダーデ区でも同様な事業をしてほしいという要望があり、今年八月に介護者支援グループを立ち上げた。
 三回目になるこの日、約十人が救済会を訪れた。ほとんどが家庭で実際に介護に当たっている。相談相手が身近におらず、一人で悩みを抱え込んでしまう人が目だっているようだ。
 母親(81)と二人で暮らしている男性(64、二世)は「母が毎日外出をしたがり、付き添いの私はへとへと。二年前から物忘れなどがひどくなり、最近病院で検査をしています」と表情をゆがめた。
 参加者は輪になって座り、それぞれが胸の内を明かした。心理士は聞き役に回り、ポイント、ポイントでコメントを加えた。
 シムラ・ナカ・スミコさん(57、二世)は「父(95)は兄弟の家を転々とする生活を送っていた。脳梗塞をわずらってから、私が引き取りました。夜に徘徊することがあり、翌日はひどく疲れてしまう」と訴えた。
 介護者の痛みを理解しておきたいと出席した荒崎栄さん(80、東京都出身)は「育った時代が異なるので、若い世代の人と同じ屋根の下で暮らすのは無理があると思う」ともらした。現在、一人暮し。子供たちと同居するつもりはなく、将来は施設への入居を希望している。「親に会ったときくらい、やさしい言葉をかけれないのかねえ」。
 中川さんによれば、立場の相違による対立は避けられない上に、なくなるものでもない。「両者の違いを受け入れる身構えが必要ではないか」。
 介護者が悩みを打ち明ける場は、ブラジルではまだ少ないという。玉城ロベルトさん(市議補佐官、沖縄県人会イピランガ支部会長)は「『介護者の日』を創設してみんなの体験を共有することができれば、支援の輪が広がっていくのではないだろうか」と提案した。
 次回は十一月三日午後二時三十分から。ポルトガル語が主体。問い合せ電話=11・3208・7248。

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