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特別寄稿=連載(8)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

2005年10月21日(金)

「統合」と新世界建設
 いずれ長い歴史の中で、ブラジルを構成する各民族・人種が混血・融合し、新しい文明・文化が誕生することになるだろう。その時、民族それぞれが文化的特質を備えつつ次第に融合して行くことによって、特質あるブラジル文化が形成されることになる。
 そうした意味でも、われわれはブラジル社会にも貢献出来る日本文化の良き資質をニッケイ後継世代にも伝えて行くとともに、ブラジル一般社会にも普及させて行くことをもって、日系社会の存在を意義あるものとすべきだと考えられる。
 「日伯学園」なるものはこうした趣旨・目的・理念のもとに構想されなければならないだろう。
 参考までに記すと、梅棹忠夫大阪国立民俗学博物館長はブラジル移民七十周年国際シンポジュームの基調講演「われら新世界に参加す」の中で次のように述べている。
 (以下、引用)「統合ということは、文化的なアイデンティティを全く失ってしまうことを意味するものではない。ブラジルについて言えば、ニッケイ人が日本的文化の諸要素を完全に失ってしまって、ブラジル基層文化の中に吸収され、埋没してしまうことではない。
 日本の文化的伝統の中に、この国の発展のために役立つような部分があるとすれば、それを大いに役立ててこそ〃統合〃の実があるのではなかろうか。社会的統合ということと文化的多元主義ということは必ず両立するものである。このブラジルにおいても人種的混合は着実に進行するにしても、それぞれの文化的伝統はある程度保持されつつ、文化的多元主義による新文明の形成という道をたどるのではないだろうか。
 その時、日系社会における文化的伝統は、新しいブラジル社会に何を寄与し、何を貢献することができるだろうか(中略)たとえば、われわれの文化的価値体系の中では勤勉という徳目がきわめて高い位置におかれていることはよく知られている事実である。
 それから知的活動性、緻密な頭脳と科学的合理主義、これらも日本文化の大きな特徴である。そして、それを次の世代に確実に伝達するための教育への熱心さ、こういうものが今日の日本の科学と技術を築き上げてきたのである。
 (中略)さらにもう一つ、日本の文化的伝統的特性をつけくわえるならばその高度な組織力ということをあげるべきだろう。それは、人間関係における誠実さ、協調性の高さ、団結力などの形であらわれてくる。
 (中略)これらの日本文化的伝統の中にふくまれた幾多の価値ある資質は、ブラジル社会においてもなお十分に価値をもつものと考える。私は日系ブラジル人の間で、これらの日本的資質がしっかりと保たれて、それによってこの社会に貢献が行われることを期待する。
 (中略)文化的伝統は遺伝的血統の問題ではない。いかに混血が進もうとも、これらの高い資質は、家庭、学校、社会の努力を通じて、確実に次の世代に伝えることができるものがある。
 (中略)日系移住者の子孫達が、このような日本の伝統ののよき点、優れた点をブラジル社会に導入する上に、きわめて有利な立場にあることはいうまでもない。文化的伝統の継承というものは、人間から人間への伝達によって可能となるものである」(引用終わり)                      (宮尾進、つづく)

■特別寄稿=連載(7)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義=なぜ民族意識が希薄なのか

■特別寄稿=連載(6)=日伯学園建設こそ= 100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

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■特別寄稿=連載(2)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

■特別寄稿=連載(1)=日伯学園建設こそ=100周年事業の本命=コロニアの現状分析と意義

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