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2年で東大修士取得=JICA支援で=2世の土屋さん=将来のリーダーに

2005年10月21日(金)

 独立行政法人国際協力機構(JICA)の「日系社会リーダー育成事業」(旧称・日系留学生奨学金事業)の一環で、〇一年から十四人が二年間の滞在費、学費などの支援を受け、日本の大学院で修士課程取得を目指している。
 同事業で初めて修士課程を取得した土屋アレシャンドレ健二さん(25、二世)は、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学を専攻した。
 「日本語習得も含め、一年くらいは研修生として過ごすのが通常」(サンパウロ支所・石橋隆介次長)だが、土屋さんは書類審査が通り、訪日後すぐに大学院生となった。
 「ブラジルとまったく違う価値観のなかで、『自分は何人なんだろう』と思ったこともありました」。アイデンティティーにも思いが到った日本での生活を振りかえる。
 土屋さんはサンパウロ市生まれの二世。両親は教育県として名高い長野出身。そのせいもあってか、初めて父母の故郷、日本の地を踏んだのは四歳のときの〃三カ月幼稚園留学〃だった。
 「両親は僕と日本語が話せなくなるのを心配したのでは。日本の印象はおぼろげですけど」。日本語能力試験の一級は十三歳で取得した。
 その後、観光やスキー場のアルバイトで訪日。四回目となった今回、日本語には全く問題はなかったが、「『空気を読む』ことには苦労しました」とも。
 〇三年四月から同大学院に在籍し、研究テーマを「ブラジルにおける新エネルギー(再生可能なエネルギー)開発政策における代替案と評価」に定めた。
 土屋さんによれば、「ブラジルの新エネルギーは風力、小規模水力、バイオマス(生物資源)の三種類で、実際は技術的な問題や経済面で大規模水力が現在主要エネルギーとなっている」という。
 新エネルギーをどういう形で導入していくかを課題にした政府の計画書で、全ての発電量が同じであることに疑問を抱いた。
 「三つの新エネルギーのバランスを取って経済的に活用していくこと、風力に主体を置くこと」を論文に盛り込んだ。
 様々な問題があると前置きしながら、「風力発電だけで国内消費電力の一、八倍を供給することは理論的に可能」と力説する。
 国際協力銀行(JBIC)に現地職員として、十一月からリオでの勤務が決まっており、「何かの形で研究したことが活かせれば」と意気込む。
 「日本語を教えてくれた両親に感謝しています。言葉を知っているのは、絶対に損にはならないし、世界が広がりますから」と表情を引き締めた。
 石橋次長は「日系社会にとって非常にめでたいこと。将来のリーダーとなることを期待したい」と笑顔で話した。
      ◎
 JICAでは〇六年度「日系リーダー育成事業」の対象者を公募している。今月末まで。将来の日系リーダーを育成することを目的にしており、農学、教育学、経済学、法学、工学、情報学(修士)医学、歯学、獣医学(博士)の学位を日本の大学院で取得するため、滞在費、学費等の側面的支援を行うもの。
 資格要件として、六六年四月二日以降に出生した日系人(三世まで)で、大学卒業者(〇六年の卒業見込み者も含む)を対象にしている。大学院の授業に支障のない日本語能力が必要。
 問い合わせはJICAサンパウロ支所(担当村本、電話=11・3251・2655)まで。

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