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まさか出国とは/迷惑だ=地元日系社会に動揺=フジモリ氏

2005年11月8日(火)

 「ペルーでの日系人の立場はとても難しいんですよ」。元フジモリ大統領が六日、チリで拘束されたことを受け、ペルー日系人協会の丸井ヘラルド顧問は本紙の電話取材に答えた。
 チリ入国後、フジモリ氏は来年四月の大統領選に出馬するとの声明を発表。現在は首都サンチアゴの警察学校で身柄を拘束されているが、チリの最高裁は拘束を継続するかどうか審議しているという。
 突然の帰国に支援者たちはフジモリ氏の政党「シ・クンプレ」(実現する)の呼び掛けに答え、市内セントロ地区に集結、数千人規模のデモを繰り広げた。
 そのテレビ中継を自宅で見たという丸井顧問は、「まさか日本を出国するとは思わなかった」と驚きを隠さない。二十以上の罪で起訴され、国際手配中であることからも立候補の可能性は低いとみる。
 「応援する人はいないのでは。亡命という行動を取ったことに対し、みんな失望している」と地元日系人の心情を代弁する。
 丸井氏は一九八七年から三年間、アラン・ガルシア政権でスポーツ長官を務め、九十年のフジモリ出馬の際、出馬反対の立場から辞退勧告もしている。
 丸井氏によれば、フジモリ氏は九九年に行ったペルー日本人移民百周年式典に出席した以外、日系社会との関係はほぼないという。個人的な意見と前置きしながら「日系人からの支持はない」。
 〇〇年の亡命時には、日系団体や日系人への誹謗中傷が相次いだこともあり、「難しい立場にある」と今後の日系社会の微妙な状況を説明、協会の定款も挙げ、政治に関わりがないことを何度も強調した。
 一方、「出馬したら、絶対勝ちますよ」と話すのは、現地日系企業の深沢アウグスト社長。特に地方でのフジモリ人気は絶大なものがあるという。
 フジモリ在職時の功績は認めつつも、「日系としては迷惑。日本でおとなしくしておいて欲しい」とキッパリ。「フジモリの騒ぎは続くと思う。いい加減にしてほしい」とも。
 今週、日系協会では日本文化を紹介する日本週間を催しているが、茶の湯コーナーをメディアが取材、知人がフジモリについての意見を聞かれたという。
 「それで記事には日本文化のことなんか出ない。日本政府が無償援助した工事なんかでもフジモリのことばかり記者は聞いてくる」 今も日系社会がメディアによるフジモリ批判の材料にされていると指摘。
 「日本人が百年かけて積み上げてきた信用をフジモリのせいでなくしている。支援する日系人などいるんでしょうか」と話した。
 今年、二月にはペルー憲法裁が〇一年に国会で決議されたフジモリ氏の十年間の公職追放を合憲とし、出馬を認めないとした一方、十月中旬には同国最高裁が公金横領について初の無罪判決を下している。
 最終的に立候補可否の判断が委ねられるペルーの全国選挙評議会(中央選管)への立候補締め切りが来年一月に迫っており、今後の動きが注目される。
 ペルー国内では以降、フジモリ氏関連の動きが大きくなると見られており、地元日系社会は身を固くして状況を見守るしかないようだ。

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